超巨大グループ企業ともなると、取引件数は数百万規模に上ります。監査法人はその一つ一つを1円単位で全てチェックすることは不可能です。限られたリソースの中で、「重要性」に基づいて金額が大きく影響度が高い取引から優先的に検証していくのが監査の基本です。

 しかも、循環取引は実際にお金が動いており、請求書もそろっています。書類上は正規の取引と区別がつきにくいのです。

 5.9兆円の売り上げの中の1.3%という比較的小さな割合で、かつ書類に不備がなく、全体としても異常性がなければ、「その広告は本当に掲載されたのか」という成果物の実在性まで確認しに行くことは現実的には考えにくいでしょう。

会計事件簿筆者作成
拡大画像表示

 ちなみにPwC Japan有限責任監査法人は、2023年にPwCあらた有限責任監査法人とPwC京都監査法人が合併して誕生しました。実はKDDIもニデックも、もともとこの京都監査法人のクライアントだったのです。

 そして、ジー・プランが広告代理事業を開始したのは2017年、ビッグローブが参入したのは2022年。いずれも京都監査法人が監査を担当していた時代です。合併によって引き継がれたクライアントの中に、すでに不正の種がまかれていた。これは何とも皮肉な構図です。

 さらに言えば、PwC Japanの監査報酬全体のうち、KDDIが約5.6%、ニデックが約4.2%を占めています。つまり報酬全体の約10%に当たるクライアントで立て続けに不正が発覚していることになります。PwC Japanにとっては、まさに「踏んだり蹴ったり」の状況でしょう。