まずは、この人気で黒字なのに視聴率がとれないパラドックスを解明するところから話を始めましょう。万年赤字の南海ホークスが、球団として日本最大級の企業価値を持つ福岡ソフトバンクホークスへと生まれ変われたのはなぜでしょうか?
その理由は「推し活経営戦略」にあります。
かつてのプロ野球人気に翳りが見えて、2004年に近鉄バファローズが消滅した頃が日本のプロ野球の転換点でした。その時期にソフトバンク、楽天、DeNAという異分子起業家が相次いでプロ野球の球団経営に新規参入します。
彼らが採用した経営戦略はまさにAKBと同じ方程式の経営でした。それは「推し人口×ひとりあたり推し消費の最大化」という数式で表現できる経営手法です。
この推し活戦略の推進の結果、日本のプロ野球球団はそれぞれの本拠地で固定ファンを抱え、それら熱狂的なサポーターたちの推し活消費によって球団が支えられる構造が出来上がり、かつてない熱い時代を迎えることができたのです。
では、なぜ人気なのに視聴率がとれないのでしょうか?
この点については、昨年末の紅白歌合戦を思い出していただくと話が早いかもしれません。レジェンドが再集結したAKB48は確かに話題を集めました。しかしコンテンツとしてのパワーにおいては、YouTube1億回再生の米津玄師や圧倒的なパフォーマンスを披露した矢沢永吉には勝てなかった。
この差は何かというと「推し人口」にフォーカスしているのか、「全人口」に訴求しているのかの違いです。
この問題構造は、経営用語で次のようにこの差を表現できます。
日本のプロ野球は「推し活経営」で成功したのですが「IP戦略」では成功できていない。もう一歩踏み込んでいえば、日本プロ野球機構には「IP戦略が不在」なのです。
この視点で野球界のコンテンツ力の違いをMLBと比較すると、読者の腹にストンと落ちるでしょう。福岡ソフトバンクホークスとロサンゼルスドジャース、あなたはどちらをIPとして評価できますか?
その視点で考えると、ドジャースについては比較的多くの日本人が知っている選手の名前が挙がります。大谷翔平というユニコーンがいて、山本由伸、佐々木朗希という日本人トリオがいる。そのうえでベッツ、フリーマンというMVPコンビがいる。
それだけではありません、日本人ファンに名前を挙げてもらうとウィル・スミス、ロハス、キケ、テオスカー、パヘズ、キム・ヘソンという名前が次々と挙がります。







