そこでは「Jリーグ百年構想」というものが存在して、サッカー人口を増やし、サッカーを国民的な人気のあるスポーツに育てる戦略が描かれています。

 中でも「サッカー日本代表がワールドカップで優勝する」というのは、その戦略構想で重要な目標です。

 現実的には百年の中の私が生きている時代では、優勝にからむところまでいけるのが、ぎりぎり夢としては実現しそうかなとイチファンとしては感じていますが、リーグはその夢を信じて、それに向かう現実の日々を送っています。

 これと比べると日本のプロ野球機構はIP戦略の要となる人材は不在です。

 コミッショナーは執行権しか持たず、決定権はオーナー会議にあります。そのオーナー会議は4分の3の合意が必要なため、議論はあくまで現行の枠組みの中での制度の調整が主題。MLBのようにエクスパンションが議題に挙がる仕組みは存在しません。

 ですからWBCについても「日本が勝つといいね」「協力は惜しまない」というスタンスに立つのですが、「WBCで連覇することで日本の野球市場のすそ野を広げる」といった戦略目標にはなっていません。「そのためにはWBCの放映権150億円をオーナー企業12社で購入して地上波放送すべきじゃないか」といった議論も生まれません。

WBCで「投手・大谷翔平」
を実現する“まさかの方法”

 WBCとワールドカップについて、プロ野球機構とJリーグの温度差を具体例で比較しましょう。

 私事ですが、2022年にこのダイヤモンドオンラインで私は「JリーグにPK戦を導入すべき」という記事を書きました(Jリーグ「引き分け廃止・PK決着」で次のW杯は日本勝利!コンサルのガチ提言 https://diamond.jp/articles/-/314678)。ワールドカップの決勝トーナメントで日本代表がPK戦で敗れるケースが多いことに対して、何らかの対策が必要だという提言です。

 この提言、実際に行おうとすると勝ち点バランスが変わってしまい、引き分けPK戦決着狙いが増えるという問題が存在します。しかし2026年にその問題を認識しながら、JリーグはPK戦導入を決断しました。

 理由はIP戦略の視点でみれば、2026年のワールドカップまでに日本選手にPK戦を慣れさせておくことが重要だからです。Jリーグではサッカー日本代表のIP価値最大化を意識した、長期視点の戦略を採択しているのです。

 一方で野球界では今回のWBC、大谷翔平は投げません。背景にはMLBの大人の事情があって、保険がおりないことで投手起用ができないのです。