農林中央金庫Photo:Bloomberg/gettyimages

2024年度に1兆8078億円の赤字を計上した農林中央金庫。外国債券依存の運用構造や不十分なガバナンスが露呈した。農林水産省主催の検証会は、資産運用体制の抜本改革を提言した。貸出金重視のポートフォリオ見直しが望まれる。(京都大学大学院経済学研究科フェロー 経済学博士 宇野 輝)

外国債券依存と貸出金比率低下が
裏目に出て大幅赤字計上に

 2024年度決算において農林中央金庫(以下農林中金という)が、大幅な赤字になる見通しとなったことを踏まえて、農林水産省は「農林中金の投融資・資金運用に関する有識者検証会」を開催し、同検証会は25年1月に報告書を提出した。

 報告書は赤字が発生した経緯や組織体制、ガバナンス体制や運用先のリスク分散について30ページにわたって分析し、対処方針を述べている。そして、「本検討会において検証した問題点や課題を農林中金および農林水産省と連携しながら早期に実施することを期待したい」と結んでいる。報告書に基づき、農林中金の資産運用体制を検証していく。

 農林中金は欧米金利の高止まりが長期化する見通しとなったことを受けて、一部資産を24年度中に売却し別資産に入れ替えること、新たに1.3兆円の資産調達等を行い自己資本の充実を図ることとした。

 入れ替えによる外国証券などの売却で、25年3月期の連結最終損益は1兆8078億円の大幅な赤字となった。農林中金の収益の約8割が外国債券など有価証券運用によるもので、同比率が約2割の3メガバンクと比較して、収益源が有価証券運用に偏っていたことが影響した。

 農林中金は農林漁業等の協同組合を会員(出資者)とする協同組織金融機関であるとともに、預金の多くを会員から受け入れている(図表1参照)。

 農林中金は25年3月期の単独の総資産約79兆円のうち、農林水産業関連の貸出金は9169億円だ。このうち農業部門への貸出金残高は636億円。18年度以降増加傾向であるものの600億円程度で推移している。報告書では「農林中金の原点に立ち戻って、農林水産業の発展に資する融資の在り方について、検証することが望ましい」としている。

 次ページでは、具体的に農林中金のポートフォリオを分析し、どう改革すべきかを提言する。