EU基金の復活と
日本企業の好機
政権交代が実現した場合、経済面で最も大きな影響を及ぼすのが、凍結されたEU基金の復活である。
現在、ハンガリーは「法の支配」の不備を理由に、EUから割り当てられるはずの結束基金やパンデミック復興基金の多くが停止されている。凍結されている資金は約200億ユーロ(約3.7兆円)と、ハンガリーのGDPのおよそ10%に相当する巨額の資金であり、この欠如が近年の経済低迷の一因にもなっていた。
新政権がEUの要求する司法改革や腐敗防止策を実行すれば、これらの凍結資金が解除され、ハンガリー国内に莫大な投資マネーが流入することになる。資金の使途は、インフラ整備やクリーンエネルギーへの転換などが中心となると見られ、ここに日本企業の商機がある。
ハンガリーには既に約180社の日系企業が進出しているが、現時点では自動車関連産業が中心となっている。EU基金が復活すれば、インフラやクリーンエネルギー分野でさらなるチャンスが広がる。
インフラ整備では、鉄道網の整備が進むことが予想される。日本企業がこれまで培った鉄道網の構築や管理・運営のノウハウが活きるだろう。クリーンエネルギー関連では、日本企業が得意とする水素技術、ヒートポンプ、スマートグリッド関連技術への需要が高まるはずだ。また、EUでシェアが広がる電気自動車(EV)向けの高性能素材といった分野でも、日本の製造技術は十分に競争力を持っている。
ハンガリーは、法人税率が9%とEU域内で最も低く、地理的にも欧州の中央に位置する物流の要衝である。労働力不足や賃金高騰といった課題はあるものの、製造拠点としての魅力は依然として高い。
近年、ハンガリーにおける日本企業のプレゼンスは中国勢や韓国勢の勢いに押され気味であったが、この政治的転換は再びプレゼンスを高める絶好の機会となりうる。選挙情勢を注視しつつ、EU基金の使途や新政権の経済政策を見極め、機動的に投資判断を下せるよう準備を進める必要があるだろう。
(伊藤忠総研副主任研究員 高野蒼太)







