地域と観光を動かす
新たな主役に

(1)観光と地域を結びつける視点

 インバウンドは、今後も日本経済の重要な柱になると見られている。空港アクセスの強化や観光地との連携など、鉄道会社は観光インフラとしての役割をますます担うようになっている。

 最近では、地域ごとに事業本部を分け、地域の特性に応じた取り組みを進める動きもある。単に「列車を走らせる」だけでなく、「どうすればその地域が元気になるか」を考えられる人材が求められている。

 鉄道は、行政区域を越えて地域をつなぐ存在だ。広い視野で地域を面として捉えられる発想が、これからはより重要になる。

(2)データとデジタルを生かせる力

 JR東日本の鉄道事業の輸送人員は1日あたり約1608万人規模(2025年4月時点)だ。これだけの顧客接点を持つ企業は、日本でもそう多くない。

 IC乗車カード「Suica」は1億枚を超える発行枚数を誇り、交通だけでなく決済インフラとしても大きな存在になっている。こうしたデータをどう分析し、どんなサービスにつなげていくか。鉄道会社は「リアルなインフラ企業」であると同時に、「データを活用する企業」へと進化しようとしている。デジタルやマーケティングに関心のある人材にとっても、活躍の余地は広がっている。

(3)技術を支える電気・土木

 現場では、技術系人材の確保が大きな課題になっている。特に電気や土木の分野は、IT企業やゼネコンとの競争もあり、人材不足が続いている。

 ただ、鉄道の技術職は、社会インフラを支える重要な役割を担いながら、比較的安定した働き方ができる点も特徴だ。安全を守る責任は重いが、その分、社会的意義も大きい。自分の専門性を長く社会に役立てたいと考える人にとっては、魅力のあるフィールドといえるだろう。

 近年は、高卒総合職の拡充など、採用の間口も広がっている。地域に根差して働きたい人や、地元を元気にしたいと考える若者にとって、チャンスは確実に増えている。また、女性や障害のある人が活躍できる体制も整いつつある。駅や本社、バックオフィスなど、役割は多様だ。鉄道というと男性中心のイメージを持たれがちだが、実際にはさまざまな人が働いている。

 デジタル企業が増える時代にあって、鉄道会社はきわめてリアルな存在だ。駅に行けば社員がいて、毎日列車が走り、社会の基盤を支えている。その安定した土台の上で、観光、決済、データ、地域開発へと事業を広げているのが、今の鉄道業界である。

 通勤需要が完全には戻らないという現実はある。しかし、インバウンドの拡大やデジタル化の進展といった追い風もある。

 鉄道が好きな人だけでなく、地域を元気にしたい人、データを活用したい人、インフラを支えたい人――大きな基盤の上で、社会に長く関わる仕事がしたい。そんな思いを持つ人にとって、鉄道業界はこれからも十分に可能性のある舞台といえそうだ。

(鉄道コンサルタント至道薫氏への取材を基に編集チームが構成)

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