それでも常識的な
退職を勧める理由は?
筆者は昭和生まれのオジサンだし、古い価値観だと非難されそうだが、それでもやはり退職代行やリベンジ退職には否定的だ。一時的にスカッとはするだろうが、人生は長い。人間関係とは意外なところで意外な人とつながっていたりするもので、この先も前の職場の人とリンクするかもしれない。……といった、エモい理由だけではない。
まず、企業が具体的な損害を被れば、個人に損害賠償を請求できる。リベンジ退職者も裁判沙汰になったり支払い命令を受けたりすれば、その後のキャリアにダメージを食らう。
民事だけではない。業務用データを消去する、物品ならびにプログラムなどを破壊・改ざんする場合は、刑法上の罪に問われる。機密情報を持ち出せば、不正競争防止法違反だ。就業規則でも禁じられているだろうから、雇用契約に違反することになり退職金の減額にもつながりかねない。
もちろん企業側も、常識的な予防策を講じるべきだろう。怒りやリベンジは、勤務初日から固まるわけではなく、徐々に積み重なるものだ。
対話をしやすい職場の雰囲気づくりや、悩みを相談できるホットラインをつくっておくべきだろう。また、ハラスメントを防ぐためにも、管理職教育によって極端なマイクロマネジメントを避けるようにしたい。人事評価を完全に透明化するのはなかなか難しいものがあるし、全員から完全な理解を得るのも難しいが、それでも、社員が納得してくれるように努めねばならない。
会社に「人」は欠かせない。従業員にとっても職場は、人生の中で奇跡的に出会った人と時間を共有する場だ(たとえ短い期間でも)。労働の原点である、尊敬と敬意を双方が忘れないようにしたい。
リベンジ退職でデータを全消去したら、皮肉なことに、誰よりも強く深く、同僚たちの記憶に刻まれるのだから。








