差がはっきり出る「上り坂」と「向かい風」

 もうひとつ、2台で大きく差を感じるのが「上り坂」と「向かい風」だ。

 河川敷の土手へ上がる緩い上りや、川沿いで風が当たる区間は、出力差がイコールで体感差になる。110は、速度を維持するために開ける量が少なくて済む。だから疲れない。Liteは、速度を維持するための“開け代”を多めに使わなければならない。この差は大きい。110は“必要なら出せる”ので運転が穏やかになり、Liteは限界が見えやすいので運転が丁寧になる。車体が同じでも、走りの設計が違うとライダーの構えが変わるのである。

 足まわりとブレーキは全く同じ。両車ともシート高738mm。車重101kgで、軽さと取り回しの良さは共通している。前輪ディスクとABS、前後キャストホイール。カブもゼータクになりました。まあ結構なお値段ですからね。

 並べて眺めても、見た目はほぼ一緒。だが走り出した瞬間から答えが違う。その違いは、単純に“馬力の有る無し”という雑な話ではなく、それぞれの存在意義につながっている。

 同じカブでも、性格が明確に違う。110は「交通の流れの中で自然に振る舞える」方向で、Liteは「限られた速度域での扱いやすさをまとめ直した」方向だ。「もともとあるバイクの出力を落とす」、という行為はネガティブに聞こえるが、こうして乗り比べてみると、Liteは“削った”だけではなく、“どこで気持ちよく走らせるか”の重心を移動させたと表現したほうが実態に近いだろう。

 それでは最後にこのバイクの○と×を。

排気量109ccで小型2種免許が必要な「スーパーカブ110」(左)と、新基準原付の「スーパーカブ110Lite」(右)。見た目はほぼ一緒だが、性格は大きく異なる2台排気量109ccで小型二種免許が必要な「スーパーカブ110」(左)と、新基準原付の「スーパーカブ110Lite」(右)。見た目はほぼ一緒だが、性格は大きく異なる2台 Photo by A.T.