志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ中国・北京モーターショー2026で、日産自動車は開発期間の半減を打ち出し、反転攻勢へ動きだした Photo:kyodonews

「中国勢は相当先を行っている。負けていると言わざるを得ない」――。2023年の中国・上海モーターショーで、世界の自動車メーカー首脳たちは中国車の驚異的な進化を目の当たりにした。同じ頃、筆者も日産自動車と中国資本の合弁会社、東風日産の20周年式典を訪れ、現地開発車の完成度に衝撃を受けた。中国BYDがわずか2年半で新型軽EV(電気自動車)を投入する時代、日本メーカーは何を学び、どう戦うべきなのか。連載『志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ』の第11回【ミライ編6】では、日産がカルロス・ゴーン時代から進めてきた「中国現地化」の舞台裏を振り返りながら、中国車“大進化”の本質を読み解く。(日産自動車元COO〈最高執行責任者〉 志賀俊之)

>>第1回【過去編1】「ゴーンさんが羽田空港で逮捕されたらしいです」(2018年11月9日)から読む

>>第5回【過去編5】中国・東風汽車と電撃提携をした日(2002年9月19日)から読む

現地開発車の完成度に驚愕
それでも「中国市場ではまだ足りない」

 2023年11月、日産自動車と中国・東風汽車との合弁会社、東風日産は設立20周年を迎え、中国・武漢市で記念式典を開催した。

 私はすでに日産を離れて4年がたっていたが、合弁会社の設立に携わった縁から招待をいただいた。中国には、“井戸を掘った人を忘れない“という文化がある。過去に尽力した人への敬意を大切にする姿勢には、胸を打たれるものがある。

 その式典で東風日産が打ち出したのが、新戦略「DNA+」だった。背景にあったのは、中国市場で急速に進んでいた新エネルギー車(NEV。電気自動車〈EV〉やプラグインハイブリッド車〈PHEV〉、燃料電池車〈FCV〉のこと)の急拡大である。それまで「外資系ブランド6割、民族系ブランド4割」だった市場構造は大きく変化し、民族系・新興メーカーの台頭によって勢力図は逆転。内燃機関車を主力としてきた外資系メーカーは苦戦を余儀なくされ、東風日産も急激にシェアを落としていた。

 そうした状況を打開するため、「DNA+」は新エネ車に経営資源を集中投下する戦略として発表されたのだった。

 会場には、東風日産の開発センター「DNTC(Dongfeng Nissan Technical Center)」が独自開発した新型車が展示されていた。

 広々とした室内空間、大型ディスプレーを中心に据えたコックピット、シンプルで洗練されたデザイン――。実車を目にした私は、思わず息をのんだ。

「いいじゃないか、これが現地開発のすごみなのか」。私は率直に賛辞を贈った。だが、東風日産の日産側トップの顔色は、なぜかさえない。

「志賀さん、確かに出来の良いクルマに仕上がりました。でも、今の中国市場では、これではまだ足りないのです」

 その一言には、中国市場で存在感を失いつつある外資ブランドの苦悩と焦燥感が凝縮されていた。