マンション羅針盤 管理&売買#23Photo:PIXTA

コストプッシュ型のインフレで工事費が3割上昇し、さらに施工会社へのコスト上昇のしわ寄せを禁じる改正建設業法が施行されるなど、マンション大規模修繕工事を取り巻く状況は激変している。これまで「施工会社はたたけばよい」と考えていたマンション管理組合は、その認識を抜本的に改めなければ、そもそも大規模修繕工事を実施することすら危うくなりかねない。連載『マンション羅針盤』の第23回では、マンション管理組合を直撃する改正建設業法と工事コスト上昇の切り抜け方をマンション管理士が指南する。(コネクトコンサルティング 代表取締役・税理士法人アイム会計事務所 社員税理士 大浦智志)

施工会社から「切られる」のはあなたのマンションかも
建設業を取り巻く激変が、大規模修繕工事にもたらすインパクトとは?

 分譲マンションにお住まいの方であれば、なじみの深い大規模修繕工事。十数年に1度のことでもあり、工事の際は複数の会社から相見積もりを取って価格競争を促すことで、費用を抑えるのが賢いやり方である――。このようなことを聞いたことがあるかもしれません。マンション管理の教科書にも載っているような基本的なこの手法が、2026年現在の建設市場においては、もはや通用しなくなりつつあるのをご存じでしょうか。

 その背景にあるのは、建設市場の歴史的ともいえる構造的な変化です。国土交通省が発表したデータによると、25年度の国内の建設投資は75兆5700億円に達する見通しであり、前年度比で3.2%増という極めて旺盛な需要が続いています。しかし、その需要の受け皿となる現場の供給能力は深刻な危機にひんしているのです。

 総務省の労働力調査などによれば、建設業の就業者数は2000年代初頭から減少を続け、24年には過去最少の477万人にまで落ち込みました。さらにその年齢構成を見ると、就業者のうち60歳以上が26%と4分の1以上を占める一方で、30歳未満はわずか12%にとどまっており、他産業と比べても著しい高齢化が進み、若年層の不足が深刻化しています。

 仕事の依頼は山のようにあるにもかかわらず、それを実際にこなす職人が圧倒的に足りないという「オーバーフロー」と呼ばれる需給の大きなアンバランスが生じているのです。これは、皆さまのマンションの修繕市場にどのような影響をもたらしているのでしょうか。次ページからは、客観的なデータと、25年12月に全面施行された「改正建設業法」という新たなルールから、管理組合が直面する現実と取るべき具体的な対応策をひもといていきます。価格転嫁を求められたらどうすればいいのか、大規模修繕計画の中身や時期の見直しを、どのようにすべきなのか。あるいはその際に管理組合側が「やってはいけないこと」とは何か。詳しく見ていきましょう。