開発責任者の重圧と自由――「先輩の言うことを聞いたから成功した、はない」
F:八木さん個人について伺います。お仕事はずっと開発を担当されてきたのですか?
八:私はもともと管理畑の人間です。プロジェクトにはずっと携わっているのですが、どちらかというと、横で開発を見て支えていた方です。熊本工場ではEPL(エンジニアリング・プロジェクト・リーダー)というニューモデルの立ち上げ、入れ込みの仕事をやっていました。工場側の段取りですね。
本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 ものづくり企画・開発部 運営マネジメント課 主幹 八木 崇氏 Photo by A.T.
F:70年近い歴史を持ったホンダ2輪の金看板を任されたわけじゃないですか。責任者に任命されたときにはどう思われましたか?
八:正直、大変なプレッシャーでした。やっぱりカブは変に変えられない車ですからね。もともと担当していた人が退職されちゃったんですよ。それで……。
F:いろいろ口を出そうとする人も多いんじゃないですか?前に三菱のデリカミニの方にインタビューをしたら、「軽にデリカの名前を付けるな」と先輩からきつく言われたと伺いました。
久:そういうのはホンダにもありますよ。CBとかカブとかゴールドウイングとか、何十年も歴史のあるブランドには、わりと多いんじゃないですかね。やっぱり聞きますよ。「こんなのCBじゃない」とか「こんなのカブじゃない」と上から言われた、といった話は。
八:ただ、そう言ってくる人たちもまた同じ開発者なんですよね。で、彼らも同じように「こんなんじゃダメだ」という風に言われてきている(笑)。
そして言う側も「こんなのカブじゃない」と言いつつ、それを素直に聞き入れたりしたら、その瞬間に進化が止まっちゃうことは十分に分かっていて言っている。
F:分かっているけど、つい言ってしまう。
八:ホンダの良いところは、開発責任者は、その「責任」がすごく重いんだけど、それに見合う自由も存分に与えられているというところです。だから「これは私が造りました」と表立って言うことが大事で、先輩の言うことを聞いたから成功したとか、そういう風土はないと思います。







