「ご褒美で釣って勉強させるのは、教育的に良くないのでは?」――そんな疑問を持つ親御さんは少なくないだろう。しかし、難関校への高い合格率を誇る進学塾VAMOS代表・富永雄輔氏の『男の子の学力の伸ばし方』を読むと、ご褒美は使い方しだいで男の子の学力を伸ばす強力な武器になることがわかる。大事なのは「何を与えるか」ではなく、「どう仕組みに組み込むか」なのだ。本連載では、本書の内容から、男の子の本能的な特徴を活かし、学力を伸ばすための考え方や手法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

ご褒美をもらった男の子Photo: Adobe Stock

大人だってご褒美で動く

 面倒な仕事を片づけているとき、「これが終わったらビールが飲める」をモチベーションにしている人は多いはずだ。

 著者は本書で、大人ですらご褒美をモチベーションにしているのだから、子どもがご褒美なしに頑張れるはずがないと指摘する。

 しかも、教育経済学の研究でも、ご褒美の有効性は証明されているという。つい「ご褒美で釣るなんて」と感じてしまいがちだが、本書はそうした先入観をくつがえしてくれる。

やはり、人はご褒美が大好きなのです。大人ですらこうなのだから、子どもがご褒美なしに頑張れるはずがありません。実際、教育経済学の研究では、動機づけにおけるご褒美(インセンティブ)の有効性が証明されています。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 ここで重要なのは、男の子と女の子ではご褒美の性質が違うという点だ。

 著者によれば、男の子は女の子よりも「目に見える形」でのご褒美をほしがる傾向が強い。ただし、それは高価なものとは限らない。

 シールが入った10円のガムや、ちょっとした文房具など、大人から見ると「どうしてそんなものが?」と首をかしげるようなアイテムであることが多いという。

「ツボ」を知る親が勝つ

 著者は、わが子にとって何がご褒美の「ツボ」なのかを把握しておくことが大切だと述べる。

 女の子がかわいい筆箱やシャープペンシルなど、周囲の目を気にした選び方をするのに対し、男の子は完全に「自分中心」だ。周りに変だと言われようが気にしない。

自分の子どもにとってなにがご褒美のツボなのか。そこを把握していれば、上手にモチベーションをアップしていくことができるでしょう。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 逆に、著者が警戒するのは、「頑張ったら何がしたい?」と聞いたときに「寝ていたい」と答える子どもだ。

 無邪気な欲求すら出てこない状態は、スイッチが非常に入りにくいサインだという。日頃から「頑張ったら○○が手に入る」という流れを家庭の中でつくっておくことが、勉強への第一歩になるだろう。

ご褒美を「習慣の仕組み」に変える

 本書が一貫して伝えるのは、ご褒美を単発のエサとして使うのではなく、勉強の習慣づくりに組み込むという発想だ。

 たとえば、「勉強を1時間やったらテレビを30分見ていいよ」というルールを設定する。勉強と楽しいことをコインの表裏のようにセットにし、「勉強したら楽しいことがある」と刷り込んでしまうのである。

 著者は、この時期の男の子に自主性を期待しすぎないことも重要だと説く。「将来どうなりたいんだ」と問い詰めるのではなく、まずはルールで動ける仕組みをつくる。

 そのルールの中にご褒美を自然に組み込むことで、男の子は「やらされている」という感覚なく、少しずつ勉強に向かえるようになるのだろう。

「目の前のこと」に集中させる力

 大人は「○○中学に受かるために、今日はこのページをやろう」と逆算して考えがちだ。しかし著者によれば、小学生の男の子は、今やっていることを遠い目標に結びつけるのが苦手だという。

 だからこそ、発想を逆にする。目の前のタスクをご褒美付きでこなす習慣をつけさせれば、結果的に目標にたどり着く――それが本書の提唱するアプローチだ。

 ご褒美は「甘やかし」ではなく、男の子の脳の特性に合った合理的な作戦である。わが子が何に目を輝かせるのか、まずはそこを観察するところから始めてみてはいかがだろうか。