テルアビブでイランのミサイル攻撃により煙が立ち上っているテルアビブでイランのミサイル攻撃により煙が立ち上っている=3月24日 Photo:AFP=JIJI

中東有事が、市場を揺るがしている。石油が絡む有事は特有の相場動意がある。そして、人災だけに、本稿が出る前でも、危急の戦禍も、トランプ大統領の停戦表明も排除はされない。不確実性下では最悪シナリオが安直に語られやすいが、その実現には時間的距離がある。それを冷静に認識し、まずは粛々とリスクを管理し、不安を抑え、次に備える構えが必要だ。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

原油相場が映す
「イラン有事」の市場心理

 21世紀の「世界の火薬庫」になるかもしれないと目された戦争が、米国とイスラエルによるイランへの奇襲で始まった。市場では平時のリスク投資の志向が、一気に有事モードに変わる。特に中東の有事は、原油・天然ガスの供給問題に絡むと、世界経済が脅かされる。

 市場では戦況に耳目が集まるが、戦争当事国は通常、自国に不都合な情報を統制する。しかも最近は、精巧なフェイクのAI動画がおびただしい量で出回り、その真偽をAIで確認するという悩ましい事態になっている。

 投資家は、この不確実な状況の中で、原油相場に注目する。原油はこの戦争が世界に影響する最重要案件であると同時に、価格という明快な指針になるからだ。

 しかし、原油市場の規模は、商品市場の中では相対的に大きいとはいえ、株や債券などの金融市場に比べれば、はるかに小さい。そこに実需筋ばかりか、投機マネーも殺到すると、当然、乱高下する。これを指針に他市場が有事対応に動くため、どこも過剰な反応にもなりやすい。

 本稿では、今回の中東有事(以後、イラン有事)における相場状況のうち、想定通りの部分と特異な部分を検討し、投資家として、この不確実な状況への構えを考える。

 戦争という悲劇で相場を語ることを不謹慎に思われる読者がいるかもしれない。筆者は自らの存念はあっても、投資ストラテジストという立場に徹して語っている。どうかご容赦いただきたい。

「遠くの戦争は買い」という相場格言がある。これは、市場が開戦に驚いて下がっても、遠い市場には、無関係であったり、戦争による特需が見込めたり、などの要因で買い場になるという見方である。

 しかし、中東、とりわけイランに関わる有事は、距離的に遠くても、世界に容易に飛び火しかねない近いところにある。今さら言うまでもないが、それはペルシャ湾岸の原油・天然ガスの供給航路であるホルムズ海峡の封鎖を、イランが容易に行えることによる。

 次ページでは、そのことを、筆者が通常、有事における市場の反応を読む3ステップに沿って整理しよう。