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米国とイランの2週間の停戦合意を受け、株式市場はひとまずリスクオンに傾いた。だが、原油の期先価格は大きく下がっておらず、供給不安とインフレ圧力はなおくすぶる。加えて、欧州ではECBのタカ派姿勢が長期金利を押し上げている。停戦を好感した市場の楽観は、なおもろい土台の上にある。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
停戦合意でも消えない
原油高リスクと中東情勢の火種
4月8日、米国とイランにおける2週間の停戦合意を受けて、世界中の市場がリスクオンに振れた。
原油価格については、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の期近物が一時1バレル=91ドル台まで下落し、リスクオンの象徴となったが、半年後などの期先物の水準はほとんど変わっていない。
原油高およびそれが促すインフレのリスクはさほど変わらず、ただ、最悪の事態が免れそうであるとの安心感から各国の株式市場が大幅上昇で反応したと考えられる。
明確に1ガロン=4ドルを上回った米国のレギュラーガソリン価格についても、一定の下げは期待できるが、ただ、WTI原油先物価格をベースに先行きを考えれば、米国民のトランプ政権への不満を解消させ得るとは考え難い。そのことが米国の対イラン交渉にも影響を及ぼし得ると考えれば、戦争終結も容易には見通し難い。
そもそも、8日には「レバノンのヒズボラは合意の対象外」とイスラエルのネタニヤフ首相が発言したうえで、「イスラエル、レバノンのヒズボラにこれまでで最大の攻撃を実施」との報道も流れている。
秋に総選挙を控えるなか、ネタニヤフ首相は対イランですら再攻撃を模索している公算が大きく、そもそも、そのイスラエルにそそのかされた形でイラン攻撃を行ったトランプ政権においては、イスラエルとの距離感をどうするのかという大きな問題を抱えていると考えてよい。
中間選挙を秋に控えるという意味では米国も同じであるが、国民の関心の多くは物価(ガソリン価格)にあり、ここで問題なのが「ホルムズ海峡はイラン次第」という構図が今回鮮明になってしまったことだ。
「イスラエルのイラン攻撃に目をつぶる」、あるいは「核開発放棄については徹底的にこれを求める」のように、イランにメリットのない形での交渉が進めば、いずれイランがホルムズ海峡を「盾」にしてくる可能性があり、「ガソリン価格」の観点からはトランプ政権が果実を得られなくなってしまう。
結局、地上部隊投入(イラン南部制圧)のような強硬路線の方が解決に近かったのではないかと思われるが、いずれにせよ、トランプ政権が選んだのは「イスラエル」という悩みの種を抱えながらの停戦である。原油価格については、先行きの楽観は禁物であろう。
次ページでは、高止まりする原油価格が欧米の金利動向に与える影響や中央銀行の金融政策へのインパクトを検証する。







