8~10兆円の円買い介入は“無駄遣い”か、円相場と為替介入と外貨準備を巡る「3つの誤解」記者団の取材に応じる財務省の三村淳財務官=5月1日 Photo:JIJI

日本の通貨当局はゴールデンウイーク中の円安進行を予防すべく為替介入を行った。為替介入についての基本となる論点はおよそ語り尽くされたと考えていた。しかし、時代を経ると、また筋違いの論点が蒸し返されたり、新たに出てきたりしている。日本投資家のリテラシーとして、為替介入への誤解を解き、円相場の基本を踏まえ、今後への視座を考える。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

4月末から5月初旬に
8兆~10兆円の円買い介入

 為替介入は、通説として、相場トレンドを方向転換させる力はなく、一時的な水準調整ほどの効果しかない。しかし、メディアのヘッドラインを飾るこの一大イベントには、為替の門外漢も加わり、誤解を含むさまざまな尾ひれを付けた論争が巻き起こる。

 為替介入に関するネット百家争鳴によって、常識として片づけられてきたことが、論点をすり替えられたり、筋違いの良い・悪い論になったりと、自国通貨についての社会的な理解度を損ない、日本投資家の相場リテラシーも危ういものにしかねない。

 今回の為替介入を整理しておこう。4月下旬に、ドル円はじり高となった。そして160円台に乗った30日、日本の財務省は、日本銀行に指示して、ドル売り円買いの為替介入を行い、ドル円をいったん155円台に押し返した。

 ドル円は、その後じりじり157円台に値を戻すと5月1日に155円台へ、157円台に再び戻すと2日にまた155円台へ押された。それでもまた158円目前まで戻した6日には、155円目前まで急落し、それぞれに介入が行われたと推測された。

 数兆円規模の為替介入なら、短期金融市場の資金需給バランスから、およその金額を間接的に推計する方法がある。それによると、4月30日に4兆~5兆円と、5月1、2、6日に小計4兆~5兆円の合計8~10兆円のドル売り円買い介入が実行されたようだ。

 次ページでは、政府当局が為替介入に踏み切った背景と、介入にまつわる誤解について解説する。