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デンソーがロームに買収提案をしている。デンソーは、ロームとアナログ半導体で協業関係にあり、2025年7月までにロームの株式を5%弱取得した。円満な関係を築いてきたにもかかわらず、なぜ、ロームの子会社化という強硬策に打って出たのか。また、買収提案が明らかになったことで、ロームの時価総額は上昇している。デンソーは膨れ上がる買収資金を用意できるのか。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、買収提案の舞台裏と買収資金の準備状況を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
パワー半導体大手幹部は「自社単独では生き残り困難」
どうなる業界再編!?東芝はローム・三菱電機と連合を画策
パワー半導体メーカーの再編機運が高まっている。
デンソーが2月までに、ロームに対して買収提案を行ったことが明らかになった。デンソーは、ロームとアナログ半導体で協業関係にあり、2025年7月までにロームの株式を5%弱取得している。少額出資の状態から、全株を取得して子会社化を目指す。
デンソーは現在、ロームだけでなく、富士電機とも炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の生産面で協業している。SiCパワー半導体は、電気自動車(EV)の製造で必須のパーツとなっている。
一方、デンソーへの対抗案をまとめようとしているのが東芝だ。東芝とロームの両社から、パワー半導体事業を切り出して、合弁会社の設立をもくろんでいる。さらに、三菱電機も巻き込んでの、パワー半導体事業の再編を画策している(詳細は、特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#14『【独自】デンソーの買収提案強行で“ローム争奪戦”が勃発!「ローム・東芝・三菱電機連合」浮上で激化するパワー半導体再編劇』を参照)。
パワー半導体を巡っては、中国勢が台頭し、日本勢の地位を脅かしつつある。あるパワー半導体大手幹部は、「(日系は)どの会社も自前でやっていけるとは思ってない」と語る。こうした危機感もあり、再編は既定路線といえる。
とはいうものの、デンソーがロームに対して、買収という「強硬策」に出たことで副作用が生じかねない面もある。完全子会社化ではなく、例えば、デンソーとロームのパワー半導体事業だけを切り出し、合弁会社を設立することや、20~30%程度に出資を引き上げ、信頼関係を築いていくといった「穏健な方法」も選択肢としてはあった。
デンソーは、なぜ、ロームの「買収」にこだわったのか。
また、買収提案が明らかになったことで、ロームの時価総額は約1兆1000億円から一時約1兆4000億円に上昇した。米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは、ローム買収提案を受けて、デンソーの財務余力は「大幅に縮小する」と公表した。デンソーは、膨れ上がる買収資金を準備できているのか。ローム争奪戦となった場合、マネーゲームで勝算はあるのだろうか。
次ページでは、ディール関係者や、デンソーと取引のある金融機関関係者への取材を基に、買収提案の舞台裏と、デンソーの買収資金の準備状況を明らかにする。







