Amazonや楽天に
“熱狂的なファン”はあまりいない
ひろゆき氏は意外にも、競争優位性を“熱量の高いファンコミュニティ”には置いていない。プラットフォームとして強いのは、熱狂されるサービスより、自然と使われるサービスだと見る。
「Amazonに“熱狂的なファン”ってあまりいないじゃないですか。楽天もそうですけど、『なんとなく便利だから使う』という存在ですよね。UP-Tも、そういうポジションを取ったほうが広がりやすいんじゃないかと思っています」
好きだから使うのではなく、必要なときに真っ先に思い浮かぶ。その“当たり前の便利さ”を取りにいくことが、UP-Tの成長戦略なのだろう。
さらに、その先にはアパレルの枠を超えたものづくりの世界も見据えている。
「今はTシャツにプリントできます、コップやキーホルダーにも展開できます、という流れですけど、その先には3Dプリンターを使ったものづくりも入ってくるはずなんです。将来的には、データを送れば必要なものが届く、という形がもっと一般的になっていくんじゃないでしょうか」
その戦略を象徴するのが、丸井織物グループが手がける高機能シャツ「NOTOSNOW(ノトスノー)」だ。価格は9800円(税抜)。濡れや汚れ、シワに強く、撥水・撥油加工を施した生地や、防シワ性の高い素材の特性を生かしている。
ただ、ひろゆき氏は、技術が優れているだけで自然に売れるわけではないと振り返る。
「2022年に開発されたものなんですけど、当時は商品の良さがうまく訴求できずに終わってしまった。でも、動画の時代になってから『これだけ弾くなら面白いよね』となって、今は結構売れているんです」
会見では、実際に醤油をかける実演も行われた。そのわかりやすさこそが、いまの時代に求められる伝え方なのだろう。
NOTOSNOWが目指したのは、汚れや濡れ、シワといった日常の小さなストレスを減らし、「服に気を遣う時間そのものを減らす」ことでもある。単に高機能なシャツというだけでなく、暮らしの快適さまで含めて価値に変えようとしている点が興味深い。
その発想は、UP-Tとのコラボレーションから生まれた「NOTO DRY Tシャツ」にも通じている。ポリエステル100%で吸水速乾性に優れ、さらっとした肌触りを持ちながら、ユーザーが自由にデザインをプリントできるのが特徴だ。高機能素材とオンデマンドの自由度を両立させようとしている。
こうした商品群について考えるとき、ひろゆき氏の言葉はシンプルだ。
「技術があっても、知られなければそのまま終わってしまうことって多い。でも今は、動画とかネットのおかげで『これ、すごいね』ってちゃんと伝わる可能性がある」
地方企業に必要なのは、技術開発力だけではない。どんな価値があり、どんな場面で役に立つのか。生活者に“意味がわかる商品”として届ける翻訳があって初めて、その技術は売り上げにつながる。







