男の子はなぜか「自分は勝てる」と思い込んでいる。根拠はないのに自信だけはある。そんなわが子を見て、苦笑いした経験のある親は多いだろう。じつはこの「根拠なき自信」こそ、男の子の学力を大きく伸ばすエンジンになると説くのが『男の子の学力の伸ばし方』(富永雄輔著、ダイヤモンド社)だ。競争心やライバル意識といった男の子特有の本能を、勉強へのやる気に転換する方法がわかれば、親の声かけひとつで子どもの成績は変わりうる。本連載では、本書の内容から、男の子の本能的な特徴を活かした学力の伸ばし方や、親ができる具体的な声かけ・習慣づくりの方法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

勉強をしている男の子Photo: Adobe Stock

「勝てる」前提で生きている

 ゲームでも漫画でもスポーツでも、男の子が夢中になるものには共通点がある。

 それは「誰かと戦い、勝つ」という構造だ。

 著者は、男の子には生まれつき「敵を倒したい」という欲求が備わっていると述べる。

 しかも、男の子はそうした闘争的なコンテンツに触れるなかで、「自分が勝つ」イメージをどんどん膨らませているのだという。

 この「なぜか勝てると思っている」心理を、本書では「根拠なき自信」と呼んでいる。

 大人から見れば無謀に映るかもしれないが、実はこの自信こそが男の子の最大の武器になると著者は語る。

小学生といえども、男の子にはもともと「敵を倒したい」という欲求があります。ゲームでも闘争ものが好きだし、漫画もスポーツなど戦うものが好きです。そして、そうしたものに触れることで「自分が勝つ」イメージを醸成させています。なぜか勝てることが大前提になっているのです。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 もちろん、いつまでも根拠のない自信だけでは困る。だからこそ、親がその自信を上手に刺激し、勉強という方向へ導いてやることが大切なのだ。

「1人抜いた」で火がつく

 では、具体的にどう声をかければいいのか。本書には印象的な例が紹介されている。

 たとえば漢字テストで10人中7位だったとする。客観的に見れば下位グループだが、前回が8位だったなら「おまえ、1人抜いたじゃないか」と褒めてよいと著者は述べる。ポイントは、「敵を倒した」イメージを持たせるように褒めることだ。

 順位が上がったという事実を「ライバルを追い抜いた」という物語に変換してあげる。すると男の子の競争本能が刺激され、「次はもう1人抜こう」という前向きな意欲が生まれやすくなるだろう。

 さらに、著者は得意教科の自信が苦手教科にも波及する現象についても触れている。

 得意科目で「ライバルに勝っている」「上位にいる」と意識させると、「俺はすごい」という自信が芽生え、なぜかほかの教科も伸びてくることが男の子にはよくあるという。得意を伸ばすことが、苦手克服への近道になるわけだ。

競争心の「暴走」を防ぐ

 ただし、競争意識は諸刃の剣でもある。著者は、行きすぎたライバル意識は本来の自分のペースを崩す原因になると注意を促している。

ただし、過度にならないように注意が必要。行きすぎたライバル意識を持つと、本来の自分のペースを崩してしまうからです。あくまで、その子のレベルに合わせて競争意欲を刺激してあげましょう。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 なかなかライバルに勝てない場合はどうすればよいか。

 著者は、まず「自分との闘いに勝つこと」を教えてあげるといいと述べる。ビジネスパーソンにたとえるなら、同期が給料3倍になっていても、自分が1.5倍になったなら喜んでいいという話だ。

 大切なのは、他人との勝ち負けだけに目を向けさせないことだろう。

「前の自分より成長できた」という実感を持たせることで、子どもの自己評価を守りながら競争意欲を維持できるのではないだろうか。

 本書が繰り返し伝えているのは、子どもが自己評価を下げないように戦わせるという視点である。

自信の「種」を枯らさない

 男の子の「根拠なき自信」は、放っておけば空回りするだけだが、親の声かけしだいで学力を伸ばす強力なエンジンに変わる。

 大切なのは、他者との比較で追い詰めるのではなく、その子なりの「勝ち」を見つけてあげることだろう。

 本書が一貫して伝えているのは、男の子特有の本能を否定せず、上手に活かすという姿勢だ。

 わが子の中にある自信の種を見つけたら、まずは「1人抜いたな」と笑顔で声をかけてみてはいかがだろうか。