「人事理論」を学んでも、「いい施策」をつくれない理由

浜岡 一方で、「知識さえあれば……」という考え方には、ずっと違和感もあります。

 たとえば、人事の方が「心理的安全性」について学んだとしますよね。で、それを自社に持ち帰って、「いまは心理的安全性がキーワードです。うちの会社でも何かやりましょう!」と呼びかけたりするわけです。ですが、そこで経営陣や現場メンバーから返ってくるリアクションって、おそらく、「え……なんで?」だと思うんですよ。

 うん、そうだろうね。

浜岡 でもこれって、「みんなが心理的安全性の大事さをわかっていない」ということではないんですよ。そうではなく、「いま、経営的に実現したいことがいろいろあるなかで、なぜ、あえて、『心理的安全性』というテーマを優先しないといけないのか?」の共通認識ができていない。

 世の中のほとんどの人事施策は、そこをすっ飛ばしたまま実行に移されているので、うまくいかない割合がすごく高いんです。その結果、現場からは「人事がまた余計なことを……」みたいな冷たい視線が集まるようになったり。

 それって、戦略コンサルが言うところの「イシュー」を押さえていない状態だよね。「組織にとって、ここは外せない!」というポイント(論点)が曖昧なまま、なんとなく施策を決めて、なんとなく実行してしまっている。

浜岡 まさにそこなんです! ですから、「人事としての専門的知識があるか?」と「それを自社コンテクストに合わせて実装できるか?」とのあいだには、実はものすごく大きな隔たりがある。人事塾の講師をしながらも、ぼくはそこがずーっと気にかかっていました。

 一方で、李さんもご存じのとおり、「理論と実践をどうブリッジさせるか?」をテーマにした人事本って、実は世の中にほとんどないですよね。「だったら、そういう本を自分が書けばいいのでは……?」と考えるようになったんです。組織人事コンサルタントとして、李さんやぼくがやっている仕事は、「理論と実践の橋渡し」がほとんどですから。

 たしかに、そこがわれわれの共通項だよね。人事についての経験や専門知識があるのはもちろんだけど、キャリアとしては、事業サイドとコーポレートサイドの両方をガッツリ経験してきている。だからこそ、「経営的イシューを押さえながら、成果につながる戦略・施策をつくる」という視点を盛り込むことができたんだと思います。