ロシア政府を追い込んでいた「圧力」
ロシアの石油・ガス収入の減速を理解するうえでは、「原油の生産量」と「価格」の二つの要因が重要である。まず生産量についてみると、ロシアはOPECプラスの枠組みのもとで上限が定められており、2026年1月までは概ねこの生産枠に沿って推移していた。
ところが、2月には生産枠を大きく下回る日量870万バレルに急低下した。
要因の一つは、ウクライナによる輸出インフラへの攻撃であり、とりわけドルジバ・パイプラインの損傷によって、東欧向け輸出が押し下げられたとみられる。
これとともに追い打ちをかけたのが、インドによる輸入の減少である。ロシア産原油のインド向け輸出は、2025年11月の日量190万バレル程度から2026年1月には110万バレル程度まで縮小した。
この背後には、米国による制裁圧力と米印間の駆け引きが存在する。米国は2025年8月に、ロシア産原油の継続的な輸入を理由として、インドに対し追加関税を適用した。二国間の貿易交渉過程で米国がロシア産原油の輸入削減を要求し、インド側が事実上これに応じたとみられる。結果的に、両国は2026年2月に首脳間で関税の引き下げに合意し、米国によるインドへの追加関税は撤廃された。
この際に強力な圧力となったのが、米国が2025年10月に発表したロシアのエネルギー部門に対する制裁強化であった。この制裁は、ロシア産原油の買い手を大幅に限定した。取引コストは大幅に高まり、価格は一段と押し下げられた。
ウラル原油と国際指標であるブレント原油の価格差は、2024年から2025年10月頃までは実勢でも概ね12~14ドル/バレルで推移していたが、米国の制裁が発動した2025年11月以降は20~30ドル/バレルへと急拡大している。
ロシアの石油・ガス収入の中核である原油の採取は、前月の原油価格と生産量をベースに算定される。
このため、2月までの「生産減少」と「ディスカウント拡大」が、1~3月の石油・ガス収入の減少として反映されたのである。







