イラン攻撃で漁夫の利を得たロシア

 米国などによるイラン攻撃は、こうした状況を一変させた。中東情勢の緊迫化を受けて国際原油価格は急騰し、ロシア産原油の輸出価格は2月の1バレル=45ドル/バレルから、3月平均では同78ドルまで上昇した。

 さらに、中東からの原油供給が大幅に縮小したことで、相対的にロシア産原油に対する需要が高まり、同原油の市場環境も改善したとみられる。これに米国の対ロシア制裁運用の緩和も重なり、制裁の効果は事実上打ち消されることとなった。

 現在の原油価格の高止まりが継続した場合、ロシア産原油の輸出価格は2026年平均で1バレル=75ドル/バレル程度を見込むことが可能である。その場合、ロシアの石油・ガス収入は約10兆ルーブルに達し、当初予算を上回る水準になると試算される(注)。

(注) 本稿では為替レートを1ドル=80ルーブルと仮定して試算した(予算前提は1ドル=92.2ルーブル)。石油・ガス収入はルーブル建てで納税されるため、ルーブル安は収入押し上げ要因、ルーブル高は押し下げ要因として作用する。

遠のくウクライナ和平

 イラン攻撃以前、ロシアでは財政悪化を背景に戦争継続のインセンティブが徐々に低下しており、同国が停戦交渉へ傾斜するとの見方も成り立ち得た。しかし、足元のエネルギー価格の上昇は、このシナリオを根底から覆しかねない。

 ウクライナ和平を巡る交渉にも、影響が生じている。2026年に入り、ウクライナ・ロシア・米国による三者協議が停戦に向けた新たな枠組みとして動き始め、アブダビやジュネーブといった中立地で複数回の対面協議が開催された。捕虜交換で合意に至るなど、進捗は限定的ながらも一定の前進が見られていた。

 しかし、米国は対イラン対応を優先し、外交・軍事資源を中東へ振り向けざるを得なくなった。その結果、ウクライナ交渉への関与は後退し、3月初めに予定されていた次回会合が延期されるなど、三者協議は事実上停滞している。

 和平への道筋は、中東情勢の悪化によって遠のいたと言わざるを得ない。