「あ、明菜さんがうたったほうがいい」と思い込んでしまった。

 それが「難破船」だった。

誕生日からたった2カ月で
「難破船」を完璧に仕上げた魔女

 明菜さんとはテレビ局のスタジオで何度か会っていた。彼女はなぜかスタジオの暗闇の中に1人でぽつんといることが多く、その姿がまた素敵だった。

 彼女の「22歳」の発言を聞いた後、私はそうして佇んでいた彼女を見つけ、「難破船」1曲をレコーディングしたカセットを手渡し、「あなたがもし、この歌をうたうなら、しばらく私はうたうのをやめるわ」と一言添えた。

 数日後、東京郊外でコンサートがあった。驚いたことに、楽屋に明菜さんからのお花が届いていた。

『「まさか」の学校』書影「まさか」の学校』(加藤登紀子、時事通信社)

 今のようにインターネットもない時代。彼女がどうしてこのコンサートを知ったのか、それが不思議だった。でもこのお花は、きっと「難破船」への答えだ、とわかった。

 レコード会社とか制作スタッフからの連絡は一切なく、8月になって「難破船」をレコーディングしていますよ、と連絡をもらった。リリースされたのは9月30日。年末のレコード大賞にノミネートされた。

 どう考えても早すぎる!!彼女の誕生日は7月13日。それからたった2カ月で完璧に仕上げた!

 やっぱり、魔女なのね、明菜さんは。

 私の行動も、もちろん早かったけど(笑)。