防衛費増・財政規律・国民負担の対立をどう和らげるかPhoto:SANKEI

見えない消費減税と防衛力増強の財源
「責任ある積極財政」も袋小路の構図

 高市政権は6月3日、物価対策としてガソリンや電気・ガス代の補助などを盛り込んだ2026年度補正予算案を閣議決定した。

 総額3.1兆円の歳出の財源は全額、赤字国債だ。高市首相は、税外収入などの増加で余裕が生じた2025年度の国債発行枠でまかなうため、国債を新たに増発することにはならないと説明しているが、物価対策では、先の選挙公約で掲げた「食料品の2年間消費税ゼロ」も、来年4月から実施する方向だ。

 税率を「ゼロ%」から「1%」に修正することも検討されているが、それでも減税実施となれば、税収は4兆円あまり穴が開くことになる。しかし、財源についての議論はほとんど行われていない。

 一方で、高市首相は対外的な脅威の強まりを理由に、国家安全保障戦略や防衛力整備計画などの安保3文書を26年内に改定し、防衛費の増額を打ち出している。すでに岸田政権で決めた防衛費GDP比2%を前倒しで達成し、さらなる増額を目指すが、この財源も今後、必要になる。

 こうした物価対策などの家計支援や防衛費の増額を掲げる下で、財政規律も維持するという「責任ある積極財政」路線は袋小路に入りかねない状況だ。

 防衛力を強化しながら、財政の健全性を維持しようとすれば、増税や歳出削減が避けられず、国民の反発を招きやすい。逆に、政治的な安定を優先して国民負担を抑えれば、防衛力の強化は難しくなる。さらに、防衛費も生活支援も同時に維持しようとすれば、財政赤字が膨らみやすい。

 こうした「トリレンマ」はすでに欧州各国で表面化している。ロシアのウクライナ侵攻を契機とした安全保障環境の悪化に加え、米国の対外姿勢が変化するなかで、防衛費が急増し、その負担が国家財政や国民生活への圧迫を通じて、政治的な分断を深め始めている。

 地政学的な緊張が高まり、安全保障上の重要性が増すなかで、こうしたトリレンマの状況は日本も例外ではない。防衛費が増額される結果、財政が制約され、世代間や地域間の政治対立を招く可能性がある。