黒田東彦の世界と経済の読み解き方Photo:Guven Ozdemir/gettyimages

大学を中心に発展した「大学町」には、他の都市とは異なる人材が集い、独特の文化が育つ。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、「欧米の大学町」。黒田氏が実際に住んで体感した、欧米の名門大学がある大学町の生活とは?

語学研修で滞在したケンブリッジ
講演のため昨年訪問し道に迷った

 都市が発達する過程には、特定の企業を中心に発展した企業城下町や、大学やその研究施設を中核に発展した「大学町」というパターンがある。特に、欧米の伝統的な名門大学が置かれた大学町は独自の文化を備えていることが多い。

 私は、英国のケンブリッジ市やオックスフォード市、ドイツのマンハイム市、米国のワシントンD.C.やニューヨーク市という大学町に住んだことがある。

 ニューヨークが大学町というのはどうかと思われるかもしれないが、ニューヨークには、コロンビア大学やコーネル大学、ニューヨーク大学、ジュリアード音楽院、それに最近有名になったフォーダム大学など、100を超える大学が存在するのである。ちなみに、東京も140ほどの大学が立地しているため、大学町ともいえるだろう。

 ケンブリッジには、1969年7月から9月まで、英国に留学する数人の人事院在外研究員と共に語学研修のために滞在し、ベルスクールという有名な語学学校に通った。英会話の能力が高まったかどうかは分からないものの、英国の生活に慣れる意味はあった。

 下宿した家は、大学の電気技師の職員とイタリア人の夫人の家だった。朝食を取った後、他の日本人研修生と共に午前中はベルスクールの授業を受けた。昼食はパブで済ませ、午後はケンブリッジの市内を見学したり、ケム川でパンティングという舟遊びをしたりして楽しんだ。

 当時のケンブリッジは人口10万人ほどの大学町で、キングス・カレッジなどケンブリッジ大学を構成する有名なカレッジとフィッツウィリアム美術館くらいしか見るべきものはなかった。

 実は昨年3月、招かれてケンブリッジのクレア・カレッジで講演し、家内と共に懐かしいケンブリッジの街を歩いた。だが、道に迷ってしまい、カレッジのゲストハウスにたどり着くのに苦労した。