ゲーム機本体には半導体などの部品コストがかかるため、一般にハードはソフトより原価率が高い。ソフト制作には開発費がかかるものの、開発費を回収したあとの売上高は基本的に利益となる構造になっているからだ。原価率の高いハードの売り上げ構成が大きくなったことが、26年3月期において任天堂の収益性が低下した主な要因といえる。
ゲーム業界では、新しいハードが発売された直後はハードの販売が先行するため、利益率が低下しやすい。一方で、普及したハード向けのソフト販売が積み上がると、収益性は改善する傾向がある。
なお、販管費についても25年3月期の約4280億円から26年3月期の約5490億円に増加している。これは、広告宣伝費が約870億円から約1450億円に、研究開発費が約1440億円から約1780億円に増加したことなどが主な要因だ。しかしながら、販管費率は約37%から約24%へと、むしろ低下している。売上高が大幅に増加しているためだ。
これらの点を踏まえれば、今後の任天堂における収益性回復のカギは、ゲーム事業において収益性の高いソフトの比率をどれだけ上げられるかが握っているといえる。
一方で、現在進行している半導体価格の高騰は業績上の懸念材料だ。
任天堂の社長である古川俊太郎氏は、26年3月期においてメモリ等の部材価格の上昇はハードの採算性に大きな影響がなかったと説明しているが、27年3月期以降は徐々に採算性を圧迫する要因になるとの見通しを示している。こうした懸念に対し、任天堂ではSwitch 2の値上げにより対応しようとしている。
任天堂の次の焦点は、Switch 2がどれだけ売れるかだけではなく、その普及をどれだけ収益性の高いソフト販売に結びつけられるかにある。
矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。X(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『決算書の比較図鑑』『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。
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