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イラン戦争で安全資産として買われた金は、原油高に伴うインフレ懸念、米利下げ観測の後退、ドル高に押されて乱高下した。停戦期待と原油安は追い風だが、ウォーシュ新FRB(米連邦準備制度理事会)議長の政策運営には不透明感も残る。金相場は再び上値を試すのか。3月以降の相場を振り返りながら検証する。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
「有事の金」も失速
原油高と米金利上昇が重荷に
金相場(現物、出所:LSEG)は、イラン情勢や米金融政策への思惑を受けて不安定な推移となり、6月24日に1トロイオンス当たり3958.76ドルと2025年11月以来の安値を付けた。
米国・イスラエルとイランの戦闘が始まって以降の金相場を振り返ると、2月28日に米国とイスラエルがイランに対する大規模な攻撃を開始したことを受けて、3月2日は安全資産である金が買われた。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害され、イランはイスラエルや湾岸諸国の米軍施設などを無人機やミサイルで反撃した。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも対イスラエル攻撃に踏み切るなど戦線は拡大した。ホルムズ海峡が事実上封鎖され、供給不安から原油が急騰し、世界景気への悪影響が懸念された。
3日は、トランプ米大統領が「本格的なイラン攻撃を始めておらず、大規模なものが間もなく来る」と発言するなど、対イラン軍事行動が激化・長期化することが懸念された。原油高によるインフレ懸念が米利下げ期待の後退やドル高を促し、金相場を圧迫した。
12日は、米早期利下げ観測の後退やドル高を受けて、金相場は下落した。イラク領海内ではイランによるとみられる攻撃で石油タンカー2隻が炎上し、イランの新指導者モジタバ・ハメネイ師は徹底抗戦の意向を示した。
週が変わって18日は、原油高やインフレへの懸念から米利下げ観測が後退し、金は下落した。イスラエルが、前日にイランの最高安全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長を殺害したことや、この日、イランのサウスパース・ガス田を空爆したことでイランの報復攻撃が警戒された。
19日は、米早期利下げ観測が後退する中、前日に続いて下落幅が大きくなった。前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を2会合連続で据え置く決定がなされ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「インフレ鈍化が進展しなければ利下げはない」と明言した。
20日も大幅続落した。米国防総省が中東に艦艇3隻を配備し、海兵隊員数千人を追加派遣すると報道され、イラン紛争の激化懸念が原油高を促し、金相場を下押しした。
FRBによる利下げ観測が後退し、金の投資妙味が減退したとの受け止めから、23日に、金は下落し、一時4100ドル割れとなった。その後、トランプ大統領は、イランと「生産的な対話」を行ったと明かし、イランの発電所などへの攻撃を5日間延期すると表明した。中東の緊張緩和への期待から、金は下げ幅を圧縮した。
26日は、原油価格や金利の高止まりが続くとの懸念で金は下落した。前日にイラン国営メディアは、同国は米側が要求する核開発放棄など15項目の停戦計画の受け入れを拒否し、交戦被害の賠償など5項目を停戦の条件として提示したと報じた。
トランプ大統領は、パキスタンを仲介役としたイランとの交渉への意欲を示す一方で、イランの主要原油積み出し拠点のカーグ島を攻略するために陸軍空挺(くうてい)部隊の派遣を準備するなど強硬姿勢もみせ、早期停戦合意への期待は後退した。
31日は、前日にトランプ大統領が、ホルムズ海峡の封鎖が続く状態でも、米国は軍事作戦を終える用意があると側近に伝えたと報じられ、この日、イランのペゼシュキアン大統領が、侵略を再開しないなど条件が満たされれば「戦闘を終わらせる意思がある」との考えを示したことで、戦争終結や米金利低下への期待から金相場は上昇した。
次ページでは4月以降の金相場を検証しつつ、先行きを予測する。








