三菱電機、ローム、タツモ…エヌビディアも注目!「パワー半導体」でAIデータセンターの省エネ支える日本の最強技術企業【厳選8社】Photo:PIXTA

パワー半導体市場に激変の波が押し寄せている。EV(電気自動車)向けの減速を尻目に、AI(人工知能)普及に伴うデータセンター需要が急拡大。エヌビディア主導の次世代給電規格がSiC(炭化ケイ素)などの採用を後押しする中、先行する海外勢に対し、日本勢は大手メーカーが協業を模索するなど合従連衡で対抗する。投資競争が激化する市場の最前線と、AI特需の恩恵を受ける国内主要メーカーのうち注目の8社の動向を追った。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)

データセンター向けに大きな需要
エヌビディアがさらに押し上げる

 パワー半導体市場に大きな変化が訪れている。欧米のEV(電気自動車)市場の成長スピード鈍化により車載向けの需給が緩む一方で、AIの普及を受けたデータセンター向けの需給がタイト化している。長期的には成長が続く見込みだが、足元では成長戦略の見直しや企業同士の合従連衡の動きが出てきている。

 パワー半導体は、低消費電力やさまざまなデバイスの小型化を可能にする。その素材は、従来のシリコン製から次世代の高耐圧・低損失の炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)へとシフトしつつある。ここ1年の市場の動きを見ると、2025年後半に汎用のパワー半導体は在庫調整が進んだほか、電源向け用途でGaNなどへの次世代品置き換え需要も出ている。

 米調査会社のグローバル・マーケット・インサイツによると、25年の世界市場規模は557億ドル(1ドル=160円換算で約8.9兆円)に達した。26年に588億ドル(同9.4兆円)、31年には770億ドル(同12.3兆円)、35年には975億ドル(同15.6兆円)に成長すると予測する(下図参照)。

 パワー半導体の新たな成長ドライバーとして期待されるのがデータセンター向けの需要だ。AIサーバーの急激な普及に伴い、データセンターの消費電力は爆発的に増えている。従来の低い電圧のまま大電力を送ろうとすると、配線に流れる電流が大きくなり、発熱や電力のロスが限界を迎えてしまう。

 そこで注目されているのが、データセンターの電源システムを直流800ボルトの高電圧に変えようという動きである。電圧を上げることで流れる電流を減らせるため、発熱を抑えながら効率よく電力を送ることが可能になる。さらに、配線を細くして材料の銅を減らせる利点もある。このシステムには高電圧に耐えられるSiCやGaNといった最先端のパワー半導体が必要となる。

 米エヌビディアは、27年以降に本格化すると想定されるAIデータセンターの電力損失対策として「800ボルト直流給電アーキテクチャ」を提唱し、鴻海精密工業や三菱電機、ローム、ルネサスエレクトロニクスなど世界の半導体メーカーや電力システムの関連企業などとパートナーシップを組み、開発に乗り出している。

巨人インフィニオン筆頭に先行する海外勢
日本はローム・東芝・三菱電機が連合模索

 課題はコスト競争力だ。SiCパワー半導体のコストを下げるには、ウエハーのサイズを現在の6インチから8インチに大きくすることが欠かせない。

 この点では海外勢が先行しており、パワー半導体の巨人、独インフィニオンは24年夏にマレーシアで大規模な8インチ工場を立ち上げ、米オンセミも投資を続けている。日本勢はSiCなどの量産化や大口径化のタイミングでやや遅れが見られ、早期のキャッチアップが課題となっている。

 海外の大きな競合に対抗するため、日本企業の間では自前主義を見直して連携する動きが始まっている。23年末にロームと東芝が国からの補助金を得て共同生産を行う計画を進めていた。これがさらに進み、26年3月には三菱電機も加わった3社での事業統合に向けた協議が報じられている。

 統合がまとまれば、世界でもトップクラスのシェアを持つグループが誕生することになり、効率的な投資が可能になると期待されている。もっとも自動車部品大手のデンソーによるロームの買収が報じられたのち、条件面で折り合いがつかなかったとみられ白紙となるなど今後の展開には不透明な点も多い。

 こうした中、日本勢はそれぞれの強みを生かしAI需要の獲得に向けて事業シフトを進めている。

次ページでは、日本のパワー半導体の関連企業8社について、それぞれ強みとなるポイントとともに、今期と来期の予想営業増益率、予想PER(株価収益率)を、銘柄表にまとめて一挙紹介する。

図表:「パワー半導体」で注目の日本企業8銘柄