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米国とイランは戦闘終結に向けた覚書に正式署名したものの、その後も攻撃の応酬が続き、最終的な和平合意への期待は後退しつつある。ホルムズ海峡に加えて紅海でもタンカーへの攻撃が相次ぎ、中東産原油の供給不安は一段と強まった。和平協議の進展と戦闘再激化の間で大きく揺れた原油相場を振り返り、今後の行方を展望する。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
覚書合意後も米国と
イランの駆け引き続く
イラン情勢は行方が不透明な状況から、一段の悪化が懸念される状況に移行しつつあるように見え、米国産原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は足元でやや上昇している。
米国とイランとの協議が最終的な和平につながるとの期待が根強かった6月ごろからの原油相場の動向を振り返る。
6月1日は、イランの革命防衛隊に近いタスニム通信が、イスラエルによるレバノン攻撃を受けてイランが米国との協議を停止していると伝えたことで、米・イランの停戦協議の先行きに不透明感が広がり、原油相場は上昇した。
一方、トランプ米大統領はSNSにイスラエルとレバノンのシーア派武装組織ヒズボラが互いに攻撃しないことで合意したと投稿し、原油は上げ幅を縮小した。WTIは5.5%高だった。
3日は上昇した。クウェート政府が、同国の国際空港ターミナルなど民間施設がイランによる弾道ミサイルや無人機の攻撃を受けて1人が死亡、60人以上が負傷したと発表した。2日にイランのタンカーや通信基地が攻撃を受けたことで、イラン革命防衛隊は米軍が駐留するクウェートとバーレーンに反撃した。
4日は、前日に米国務省が、イスラエルとレバノン両政府が停戦履行で合意したと改めて発表し、ホルムズ海峡の再開に向けての期待がやや高まって、WTIは3.1%安となった。5日は、5月の米雇用統計で、就業者数が市場予想を大幅に上回ったことで、年内の米利上げ観測が強まり、米市場金利やドル相場が上昇して、ドル建ての原油は割高感から売られた。株価が急落し、リスク回避の動きが強まったことも原油売りにつながった。
週が明けて、9日は、前日にイランとイスラエルが相互に攻撃停止を表明し、米国とイランとの戦闘終結に向けた協議が進展するとの期待につながり、原油相場は下落した。
その後、トランプ大統領は、前日の米軍の戦闘ヘリコプター「アパッチ」の墜落はイランによる撃墜だったとし、報復する必要があると表明して、原油は下げ幅を縮小した。WTIは3.4%安だった。
12日は、米国とイランによる戦闘終結やホルムズ海峡の開放に向けた覚書での合意が近づいているとの期待が広がって、WTIは3.2%下落した。交渉関連情報の錯綜が続いたが、覚書について、イランのアラグチ外相は「これまでになく実現に近づいている」と述べた。
15日は、前日に米・イランが戦闘終結に向けての覚書に合意したと発表し、19日にスイスで署名式を行った後、ホルムズ海峡を開放するとの内容と伝えられたことで、WTIは4.9%安と大幅下落した。ただ、イスラエルのカッツ国防相がレバノンから部隊を撤退させない意向を示すなど事態が収束しない可能性も懸念された。
米・イランの戦闘終結に向けた覚書に、米国がイランに石油の販売をただちに認めるとの内容が含まれると報道されたことなどを材料に、16日のWTIは5.8%安となった。
次ページでは、覚書に合意して以降の原油相場動向を検証し、今後を予測する。







