Photo:Sipa USA/JIJI
ウォーシュ新FRB(米連邦準備制度理事会)議長は就任後の初回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、声明文の簡素化やタスクフォース設置など、パウエル前体制からの転換を鮮明にした。発信を絞り、予測やモデル依存を見直す改革は、FRBの信認回復を狙う一方、市場のボラティリティーを高める可能性がある。(みずほ総合研究所調査部プリンシパル 小野 亮)
ウォーシュ新議長が放った
FRB改革の号砲
2026年6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、金融市場にとって大きなサプライズとなった。
就任1回目の会合である以上、ケビン・ウォーシュ新FRB(米連邦準備制度理事会)議長もさすがにパウエル前体制との継続性を重視するだろう――そうみられていた。
ところが蓋を開けてみれば、彼はFRB改革の号砲を高らかに撃ち放った。簡素化された声明文、記者会見での抑制的な発信、五つのタスクフォースの設置、そして議長自身による経済・政策金利見通しの不提出。いずれも従来のFRB運営とは一線を画す対応である。
これらは唐突な思いつきではない。むしろ、ウォーシュ議長が過去数年にわたって繰り返してきたFRB批判を、そのまま制度改革として実装し始めたものとみるべきである。
彼のFRB批判は、単に「金融政策が緩すぎた」「インフレ対応が遅れた」というものではない。より根本には、FRBが自らの役割を広げすぎ、発信を増やしすぎ、精緻(せいち)に見える予測やモデルに依存しすぎた結果、政策判断の厳格さと機動性を失ったという問題意識がある。
ウォーシュ議長にとってFRBは、すでに信認を損ない、正統性を摩耗させている存在である。25年4月には「復元とまではいかなくとも改革」し、政策を本来の軌道に戻す必要があると主張した。
しかもその傷は外部環境ではなく、組織風土、政策実務、ガバナンスのゆがみに起因する「自傷的なもの」だという。だからこそFRBは「甘やかされた王子」として扱われるべきではなく、「成果が悪ければ厳しい問い、強い監督、誤れば非難にさらされるべきだ」というのが彼の立場である。
ウォーシュ議長は、FRBが抱える問題を三つの層で、かつ独特の言い回しで批判してきた。
組織の硬直性をめぐる「集団思考」「現状維持の専制」。権限の自己肥大化や政治的越境をめぐる「制度的ドリフト」「政府の万能機関化」。そして知的停滞と安易な政策実務をめぐる「偽りの精緻さ」「中央銀行版ファストフード」である。
こうした問題が看過できないのは、強力な政策手段を誤用すれば、FRBが「魔法使いの弟子」のように自ら制御不能な事態を招きかねないためだ。
次ページでは、こうしたウォーシュ議長の問題意識に基づいたFRBの改革を検証し、金融政策の行方を予測する。







