社長交代記者会見での言い争い(2013年2月26日)

 2013年2月26日、東芝ビルで社長交代の記者会見が行われた。新社長は副社長の田中久雄氏、西田厚聰会長は会長を留任し、佐々木則夫氏は新たに設置する副会長に就任する。その記者会見について、朝日新聞の「けいざい深話」(2013年4月24日)は以下のように紹介する。

「一つの事業しかやってこなかった人が東芝全体を見られるのか」。東芝会長の西田厚聰の発言は続いた。
 副社長の田中久雄(62)が新社長に昇格することが発表された2月26日、会場の東芝本社には約120人の報道陣が詰めかけた。
 社長の佐々木則夫は、報道陣から「会長から批判されたと感じなかったか」と問われ、「私は数字をしっかり残してきた。批判される要素はない」と言い残して会場を後にした。
 公の席で、激しく火花を散らした社長と会長の両トップ。新社長の発表という高揚感より、両トップの間の距離感が際だった。

 そして2013年4月には、2012年6月に代表執行役副社長を退任した室町正志氏が取締役監査委員として就任することが発表された。当時、2014年6月に退任する予定である西田会長の後任であると西田氏は関係者に話していた。

 一方、西田会長による佐々木社長の追い落としは、2012年12月の安倍政権の経済財政諮問会議のメンバーに佐々木社長が選ばれたことに端を発しているという人も多い。経済財政諮問会議は大きな経済政策の司令塔の役割を果たしている会議体である。現在もそうであるが、経済財政諮問会議の民間議員は、経団連会長の指定ポストであった。

 それが当時の経団連会長の米倉弘昌氏でなく佐々木氏だったこと、さらに2013年2月12日には佐々木氏が経団連副会長に就任することが内定し、佐々木氏が次期経団連会長の有力候補になったことからである。西田氏は経団連会長を夢見ていたと言われている。

東芝 転落の深層――経営不祥事と裁判久保 誠『東芝 転落の深層――経営不祥事と裁判』(朝日新聞出版)

 実際、西田氏の社長時代、毎日のように早朝、当時の経団連会長だった御手洗冨士夫氏に電話し、経済情勢や国際情勢の中で日本経済はどうするべきかなどについて自分の見識と考えを伝えていたそうである。

 自分の経団連会長の夢が無くなって、けんか相手の佐々木氏が経団連会長になることなど西田氏が許せるはずがない。それで西田氏は佐々木氏を経団連会長の資格がない東芝の副会長に追いやったとのストーリーである。

 西田氏も佐々木氏も会社を踏み台にして自分の名誉欲を満足させることに大半のエネルギーを費やしていたとしか思えない。

 すなわち会社の最高権力者である社長が、社業に専念し会社のために何をすべきかより、自分の名誉欲を優先し、そのために横暴かつ無謀な経営をしたことが東芝で起こった様々な不祥事の原点にあるのではないかと強く思う。