日経が伝えるように、企業オーナーや富裕層の資産を管理するファミリーオフィスは2025年に3384社と、2年で25%も増えている。米投資会社も相次いで香港にオフィスを構えており、「香港は勢いを増している」と言うべき状況だ。

 ただし、問題はその「中身」だ。たとえば、前述のGFCI 38で興味深いのは、フィンテック部門で香港は客観的順位では1位なのに、フィンテック業界関係者による評価では5位まで下がることだ。業界内で香港の魅力が数字ほど大きくない可能性がある。

国際金融センターから「中国の関所」へ

 香港に集まるマネーは主に次の三つに分類される。一つめは、中国本土企業が国際的な資金を調達するための需要。二つめは、本土の富裕層が資産を海外に逃がすための「逃避資本」。三つめは、中国関連ビジネスに投資したい外資が、その窓口として香港を使う動きである。

 ここで重要なのが二つめの「逃避資本」だ。純資金流入81%増という数字の裏には、不動産不況とデフレ圧力にあえぐ本土から、少しでも安全な場所へ資産を移したいという切実な願いがある。中国当局は現在、資金を外国に移動させることを厳しく制限しており、香港は数少ない現実的なルートの一つだ。

 日経記事が「中国の弱さの裏返し」と書いたのは、まさにこのことである。香港の繁栄は、中国経済の強さではなく、本土に資産を置いておけないという不安が生み出している。

 ボストン・コンサルティング・グループは、香港の域外資産の59%を占める本土マネーが、2030年には68%まで高まると予測する。香港における「国際的な富裕層マネー」が、実際は中国一色に染まっていっているのである。

 香港は、世界の資本が集まる「国際金融センター」から、中国資本が世界と出入りするための「関所」へと役割を変えつつある。