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最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。トランプ政権の脱欧州路線の下でヨーロッパ各国が立たされた岐路とは?国際秩序の再編が加速する中、日本が避けなくてはならない敵対シナリオとは?マルクスの『資本論』を貫くカントの方法論とは?『知らないと恥をかく世界の大問題17 米・中・露、三極構造の時代』『見えない戦争』『プロレゴーメナ』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)
トランプ政権が進める脱欧州路線
ヨーロッパ各国が立たされた岐路
池上彰著『知らないと恥をかく世界の大問題17 米・中・露、三極構造の時代』を読むと、米国がヨーロッパへの関与を急速に薄めている現実が見えてくる。
池上彰著『知らないと恥をかく世界の大問題17 米・中・露、三極構造の時代』角川新書、2026年6月刊行
〈2025年のミュンヘン安全保障会議でのアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領のスピーチが話題になりました。
「ロシアや中国などの外部の脅威ではなく、ヨーロッパの民主主義に対する最大の危険は内部の脅威である。ヨーロッパで最も重要な問題は大量移民である」
アメリカはヨーロッパに対して文句をつけているのです。ヨーロッパの同盟国について、移民政策などで弱体化しているぞと。さらに第2期トランプ政権の「国家安全保障戦略」では、ヨーロッパは文明の消滅に直面していて、将来的にはアメリカの信頼できる同盟国としての地位を失う可能性があるとの見解さえ示しています。
これまで、アメリカの国益に無関係な紛争に巻き込まれてきたという言い方をして、アメリカはもう関与しない方針を示しました。
これはヨーロッパにとって大変衝撃的な出来事だったのではないでしょうか〉(164~165ページ)
米トランプ政権は、中東と中国に精力を集中することが米国の国益にかなうと考えている。本来、このシフトは1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、91年12月にソ連が崩壊した時点で行われなくてはならなかった。しかし、世界の覇者となった米国は、自由、民主主義、市場経済という自らの価値観で世界を席巻できると誤認した。
トランプ政権の脱ヨーロッパ路線に困惑したヨーロッパ諸国、とりわけドイツはロシアを仮想敵国と定めることによって、軍事力強化に走っている。池上氏は現在、ヨーロッパが抱える課題についてこう整理する。
〈ヨーロッパはアメリカを頼りに戦後復興を果たし、経済的な繁栄を手にしてきました。しかしいまその頼みの綱だったアメリカとの関係が変化しています。
岐路に立たされたヨーロッパ。「自由」「民主主義」「法の支配」といった理想を守りつつ、壊された国際秩序を転換していくことができるのか。ヨーロッパの知恵が試されています〉(165ページ)
評者の見るところ、ヨーロッパは「自由」「民主主義」「法の支配」といった理想を建前としつつ、ロシアの脅威を強調し、軍事力と国内統制の強化に努めていくと思う。軍備負担によってヨーロッパの人々の生活は厳しくなっていく。その状況を維持するためにも、ロシアという「敵のイメージ」が必要とされる。







