債券運用で異彩を放つ地方銀行がある。愛媛県の伊予銀行だ。債券投資などの損益を示す国債等債券関係損益は、伊予銀行が2022年度と23年度に続き、24年度中間決算でも2位の静岡銀行に20倍以上の差をつけてぶっちぎりのトップに君臨している。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、伊予銀行にとって逆風となるはずの今年7月の円急騰の場面に対応できた理由について、長田浩CFOに聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
伊予銀行の傑出した債券運用
2位に20倍以上の差でトップ
愛媛県の伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングス(HD)の決算が絶好調だ。
2025年3月期中間決算の連結純利益は前年同期比+21.9%の299億円、通期業績予想を同320億円から同500億円へ大幅に上方修正した。中期経営計画最終年度の26年度の純利益目標は350億円であるため、中計策定年度ですでに最終年度の目標を150億円も上回ることになる。
それほどまで利益が上振れた最大の要因は、子会社である伊予銀行の外貨債券運用が絶好調だからだ。下表のように、債券投資などの損益を示す国債等債券関係損益では、全国の地方銀行で伊予銀行だけが桁違いの“爆益”を計上し続けている。
伊予銀行の外債運用の特徴は、21年半ばから為替ヘッジ付き外債の残高を抑制し、為替ヘッジなしの外債の残高を増やしてきたことだ。
為替ヘッジなしの場合、円安になれば為替差益を得られる一方、円高になれば為替差損を被る。ほとんどの地銀は円高による為替差損を恐れ、外債をヘッジ付きで運用する。伊予銀行のように、ヘッジなし外債の残高を増やすケースはまれだ。
22年以降は為替が円安方向に大きく振れたことにより、同行は為替差益を得られた。その結果、22年度と23年度の2期連続で巨額の債券売却益を計上している。
だが24年7月31日、日本銀行が政策金利を0.25%に引き上げた後、8月5日には一時1ドル=141円台まで一気に円高が進んだ。円安のメリットを享受できた過去2年間と異なり、急に円高が進めば為替差損を被るはずだ。
ところが伊予銀行は、逆風となるはずの円高にも見事に対応していた。いよぎんHDの長田浩グループCFO(最高財務責任者)は「円高が進む前に売却益を計上していたので、うまく売り抜けられた」と振り返る。こうして生まれたのが、152億円の爆益だ。
多くの地銀が債券運用に苦心する中、為替の乱高下にも対応できる巧みな運用はなぜ可能なのか。次ページでは長田CFOに、高い運用成果の要因と、円高前に実施したオペレーションについて聞いた。