クローズアップ商社Photo by Norihiro Okawa

中東情勢の緊迫化など国際情勢の不確実性が高まる中、多くの輸出入企業が急激なコスト変動や航路変更に翻弄されている。貿易業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を手掛けるShippioの調査では、約7割の輸出入企業が国際物流コストの管理が不十分なことで何らかの損失を受けている一方、生じた損失を金額ベースで把握できている企業はわずか2割にとどまった。なぜ、多くの企業が自らの損失額すら把握できないのか。連載『クローズアップ商社』の本稿では、Shippioの佐藤孝徳CEOが“見えない損失”の実像を明らかにし、「現状維持」に潜むリスクを語った。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)

荷主企業の3割が損失額すら把握できず
国際物流の現場でDXが進まない構造的要因

――緊迫する中東情勢など、地政学リスクの高まりが顕在化しています。日本の輸出入企業において、こうした環境の変化は現場にどのような影響を与えているのでしょうか。

 まず大前提として、島国である日本にとって貿易は大きなインフラであり、産業です。われわれ日本はグローバルなサプライチェーンからとても切り離せない、非常に大きな影響を受ける国だということです。

 米トランプ政権による関税政策や中東情勢の緊迫化などの影響を被るのが国際物流です。例えばスエズ運河が通れなくなると、船はアフリカの喜望峰経由で迂回せざるを得ません。業界では「船足(ふなあし)」と言いますが、航海日数が増えれば、当然必要な燃料は増えるので、サーチャージのような費用が上がってきます。

 こうした国際物流におけるコスト上昇は、荷主企業にはコントロールできません。では、その変動を「リアルタイムに把握できているのか」と言われると、非常に難しい現状があります。

 現場はいまだにデジタル化が進んでいないため、船会社との過去のやりとりや、単純に船が今どこを進んでいるのかも分からないケースが多々あるのです。

――Shippioが6月に製造業や商社、小売業などのサプライチェーンの担当者300人を対象に実施したアンケート調査では、72%が過去1年間に「損失の影響を経験した」と回答した一方、「損失を全て金額で把握している」と答えたのは全体の21%にとどまりました。この結果をどう見ればよいですか。

Shippioの発表資料Shippioの発表資料から引用 拡大画像表示

なぜ、多くの荷主企業が損失額を把握することもままならないのか。次ページではShippioの佐藤孝徳CEOが、自社の損益を揺るがす「見えない損失」とデジタル化を阻む業界特有の不都合な構造を徹底解説。さらに三井物産という巨大商社でもまれた経験が、なぜ泥くさい物流イノベーションに結実したのか、次世代リーダーに不可欠な「商社パーソンの資質」と共に明かす。