「長らく都心で暮らしていましたから、本当に自分が岩手の田舎でやっていけるのか不安でした。また、転職先を探すにしても仕事は限られるでしょうし、年収も大きく下がるはず。岩手には友人も知人もいませんし、いろんなものを手放さなければならないことに、やはり迷いはありました」
さらに、横須賀にいる両親からすれば、池野さんの奥州移住は寝耳に水の選択肢だったはず。難色を示されることこそなかったが、「驚かれましたし、寂しそうな顔をしていました(苦笑)」と言う。それでも子育ての環境を重視して、池野さんは会社に退職の意志を伝えたのだった。
奥州市への移住と同時に
フルリモート勤務の企業に入社
なお、奥州市での転職活動については、池野さんなりの勝算があったという。
「奥州市の隣りの北上市には工業団地があり、半導体メーカーが多く集まっているんです。営業職は難しくても、工場での品質管理など、何らかの選択肢があるはずで、転職エージェントにもそうした希望をお伝えしていました」
すると、事情を理解したエージェントの担当者から思わぬ提案を受け、池野さんの進路は一変する。
「担当の方から『半導体業界にどこまでこだわりますか?』と聞かれ、考えてみればどうしても半導体でなければいけないわけではないことに気が付きました。前職の5年間でやりきった感がありましたし、激しい価格競争にさらされる現実も知っていましたから、この機に新しい分野にチャレンジするのもいいかもしれないと思うようになったんです」
果たして、エージェントから示された代案は、半導体業界以外も含めた、フルリモートでの勤務が可能な企業への転職だった。これは目からウロコのアイデアで、必ずしも奥州市近隣の企業に勤める必要はないとなれば、選択肢は一気に広がった。
そして決まったのが、都内に本社を置く建設系の経営管理システムを扱うIT企業だった。職種はカスタマーサクセスで、つまりは自社の製品やサービスを通して顧客をサポートする役どころである。







