【Iターン転職】熊本のスタートアップで「上場企業で磨いたスキル」が開花したワケ熊本のスタートアップにIターン転職した中村一貴さん

働き方が多様化する今、UターンやIターンをはじめ、ローカルは働く舞台として大きな選択肢の一つだ。今回ご紹介するのは、上場企業で磨いた営業スキルを武器に、熊本にIターンしてスタートアップを支える、中村一貴さんの事例である。(取材・文/フリーライター 友清 哲)

一度は教員を志すものの
翻意して一般企業へ

 熊本県に本社を置くトイメディカルは、現代人にありがちな塩分の過剰摂取という課題の解決に取り組む、フードテック系のスタートアップだ。

 具体的には、海藻由来の「塩分オフセット技術」をベースに、体内の塩分を吸着して排出するサプリメントや食材の開発を行っている。いわば、食における“おいしさ”と“健康”を両立させる、次世代の食文化の創出に寄与する注目企業である。

 そのトイメディカルで現在、若くして営業部門のトップを張る中村一貴さん(32歳)は、もともと北海道札幌市の生まれ。体育教員を目指して道内の大学で教職課程を修めたものの、卒業前に翻意して一般企業に就職したのが運命の分かれ道だった。

「高校時代の恩師から、『先生になるなら、一度外の世界を経験しておいたほうがいい』とアドバイスをもらったことが大きかったですね。もともと父が営業職だったこともあり、子どもの頃からお客さんと電話でやり取りする姿を見て、なんだかかっこいいなと感じていましたし」

 中村さんの父親は金網メーカーの営業担当で、北海道の某有名動物園の改装にも携わっていたという。

 小学生の頃、家族で父親が改装に携わった動物園に遊びに行った際、父親が園長と仲良く話している様子を見て「こうして人の懐に入っていく仕事って魅力的だな、と思ったのを覚えています」と中村さんは言う。人間関係から何かが生まれる醍醐味を、子どもなりに感じ取っていたわけだ。

 なお、教職から一般企業に鞍替えしたことについて、両親は概ね好意的だったという。「ただし、会社選びだけはきちんとやるように」――それが両親からの唯一の助言であった。