元都庁勤務の阿部翔太さん。
働き方が多様化する昨今、ローカルは働く舞台として有力な選択肢のひとつだ。今回は好きなことを仕事にするために東京都庁を退職し、福島県の磐梯町で新たな職に就いた阿部翔太さんのケースをご紹介しよう。阿部さんの「福島に移住したい欲」に火をつけた「ものづくり」の仕事とは?(取材・文・写真/フリーライター 友清 哲)
都庁勤務時代に生まれた
福島との縁
世界的に注目を集めるジャパニーズウイスキー。一時期の暴騰ぶりこそ収束しつつあるが、依然として高い評価を受けていることに変わりはなく、日本各地には続々と新たな蒸留所が誕生している。
福島県耶麻郡磐梯町、日本で4番目に大きな面積を誇る猪苗代湖のすぐそばで、2024年9月から本格稼働している「天鏡蒸溜所」(天鏡株式会社)もまた、愛好家の興味をそそってやまない新興蒸留所のひとつである。
都庁勤務時代の阿部さん。 写真提供/本人
その天鏡蒸溜所で事業部長の肩書きを持つ阿部翔太さんの前職は、東京都庁の職員。ウイスキー業界の中でも異色の経歴の持ち主だ。まずは阿部さんのキャリアを簡単に振り返ろう。
「生まれは東京都の江戸川区で、その後、引っ越しを経て千葉県の市川市で育ちました。出身大学は千葉大学で、法律系の学部に所属していたためか、周囲には公務員を目指す人が多く、僕も自然とそういう方向を目指すようになったんです」
大学がのどかな環境にあったことから、「せっかくなら都心で働きたい」という気持ちが高まったのが、都庁への就職を考え始めたきっかけだと阿部さんは振り返る。
首尾よく目標を叶え、「入都」を果たしたのは、2011年のこと。ちなみに入都とは、東京都の職員として働き始めることを指す独特の用語である。
最初の5年間を税金関連の部署で過ごした阿部さんは、その後、教育関連、交通局と順調にキャリアを重ねていく。ひとつの転機は32歳の時、管理職試験に合格したことだった。
「都の職員は管理職試験に合格すると、キャリアアップのために国や民間企業、あるいは地方自治体に派遣される慣習があるんです。僕の場合は福島県庁への出向を命じられ、避難地域復興局という部署で1年間、震災で被害を被った12市町村の支援を担当することになりました」
偶然的に決まった福島行き。これが、阿部さんの人生を急旋回させることになる。







