組織はフラットに
自ら考え、生き抜く力を身につける
本田 こちらは、2000人を超える規模でありながら、驚くほどヒエラルキーがありませんね。
牧野 かつては、代表3人で、500人ほどをフラットに見る組織を作っていました。500人くらいまでは、毎日コミュニケーションを取ってやっていても、そんなに大変なことではありませんでした。ただ、もちろんマイナスもあった。細かく見切れない部分もありますから。でも、それでも中間職を置きたくなかったんです。
本田 変化のきっかけは？
牧野 規模が大きくなり過ぎて、さすがに階層を作らざるをえませんでした。それでも200人のマネージャーを直接、経営陣が見て、その下にメンバーがいるという、ほとんど階層のない組織です。
本田 マネージャーの判断基準は何だったんですか？
牧野 マネージャー適性を見てマネージャーになっているわけではないんです。基本的に、誰かに統制を取られたりするのではなく、自分で考えて好きにやってきて育ってきているので、基本のスタンスは好きにやらせることなんです。だから、マネージャーには難しさもある。全社員を集めたときには、マネージャーをマネージャーとして温かい目で見るよう話しています。自分たちが選んだ優秀な人間がマネージャーになっている。マネージャーになった途端、マネージャーらしい仕事をしろ、などと言うな、と（笑）
本田 ●●になった途端、●●らしい仕事をしろ、と言うのはよく聞くセリフですね（笑）
牧野 組織は常に流動化することを前提としているので、役職で固定化はしていません。キャリアパスが見えづらいなど、ネガティブとも思える要素もありますが、今でも数年に一度、大きな組織改革をして会社にダイナミズムを与えています。ポジションのキャリアパスを持っていても、仕方がないんです。結局は、社内だけでなく、社外に行ってもそうですが、問題が起こったときに、それにどう対処し、解決できるか、という人材こそが、社会的にも価値があるからです。そこだけで十分だと思っています。その優劣でこそ、本来は評価されるべきなんです。
本田 経済が右肩上がりで大きくなり、組織も大きくなるときには、実は年功序列がいいに決まっています。しかし今、そんなことをしていたら、会社は大変なことになる。では、明確なキャリアパスがない中で、何がモチベーションになっているのでしょうか。
牧野 会社が向かっている方向性が、世の中の役に立っているということです。私自身も社会貢献するために起業していますし、ビジネスってそうでなくてはいけないと思うんです。
それが実感できれば、これからを生きていく力が身についていることが自分にもわかります。ヒエラルキーのある組織で、いかにポジションが上に上がっていっても、生き抜く力が身についていなければ、実は本末転倒。
実際、ポジションを得たために専門性を失ってしまうという人もいます。結果的に、ポジションは務まるけれど、専門性がなくなっていく、技術を失うという極めて危険な状態になりかねないのです。これが、実はもっともリスクが高いのではないでしょうか。
組織がフラットであるということは、心地よく働けるというだけではありません。自ら考え、自由に働くことで、生き抜く力を常に身につける環境にいられる、ということでもあるのです。
◆「あたらしい働き方」バックナンバー
第1回 あたらしい働き方がどんどん出てくる今、
なぜまだ昔の基準のまま会社を選ぶのか
第2回 あたらしい企業選びの基準
6つのクライテリアと17の必要なスキル
第3回 セルフマネジメントができる人には、こんなラッキーな会社はない
【企業インタビュー：パタゴニア編】
第4回 働きやすさとは、カルチャーが合うか、合わないか
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第5回 日数制限のない有給制度をつくってしまった会社があった
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第6回 イノベーションを生み出す力を身につけるための教室は、
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第7回 なぜあの会社には、働き方のルールがないのか？
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第8回 会社への文句を
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【企業インタビュー：セールスフォース・ドットコム】
第9回 仕事と趣味の境界線を曖昧にする。
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第14回 営業も部長も課長もいない
売上目標や個人予算なんてクソ食らえ
【企業インタビュー：チームラボ編】
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本田直之（ほんだ・なおゆき）
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼ＣＥＯ
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。
幸福度ランキングトップの北欧（デンマーク、スウェーデン、フィンランド）の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』（ダイヤモンド社）が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』（朝日新聞出版）、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』（以上、大和書房）『ハワイが教えてくれたこと。』（イースト・プレス）などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。
