“つながる力”を取り戻す―― 従業員を孤立させない組織に必要なこと

効率化や柔軟な働き方が進む一方で、職場では人と人とのつながりが希薄になっている。若手社員は居場所を見い出せずに早々に離職し、中間管理職は誰にも本音を相談できないまま孤立する――その要因として指摘されるのが、組織構造の変化やテレワークの定着によるコミュニケーション機会の減少だ。従業員が安心して働き続けられる職場をつくるには何が必要なのか? 大学生&新卒社員向け「フレッシャーズ・コース2027」にも出演し、日本社会の孤立問題を研究する早稲田大学文学学術院文化構想学部の石田光規教授に、人がつながり続けられる組織のあり方を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、アーク・コミュニケーションズ 阿部加寿世、撮影/菅沢健治)

日本型組織の“強み”は、なぜ機能しなくなったのか?

 日本企業は長らく、“集団的”であることを強みとしてきた。個々の能力以上に、集団のなかで「一緒に働くこと」そのものが成果につながると考えられていた。時間をかけて関係を築き、その関係性のなかで知識や経験が受け継がれていく。良くも悪くも、人は組織に包み込まれながら働いていた。

石田 バブル崩壊までは、日本企業の集団性は大きな強みでした。終身雇用や年功序列のもと、長く組織に留まり、時間をかけて人間関係を築いてきたからです。ところが、バブルが崩壊すると、その集団性が「イノベーションを阻害している」「個人の発想をつぶしている」といわれるようになりました。そこで、1990年代半ば以降、縦割りの組織を見直し、部署横断のプロジェクト型やネットワーク型の組織へ移行する流れが一気に進みました。

 この転換は、一見すると、合理的で、時代に即した変化に見える。しかし、石田教授は「そこで見落とされたものがある」と指摘する。

石田 ネットワーク型の組織は、自分から声をかけられる人、自分で関係を築ける人にとっては、とても居心地のよい構造です。しかし、関係づくりが得意ではない人、きっかけがないと動けない人にとっては、とても厳しい。結果として、関係づくりが得意な人ほど機会に恵まれ、そうでない人は組織のなかで居場所を失いやすくなります。組織構造が変わったことで、むしろ、人間関係の格差が広がった側面もあります。

 こうした構造的な変化に追い打ちをかけたのが、2020年以降のコロナ禍だった。対面での雑談や立ち話、仕事帰りの食事や飲み会など、一見すると「無駄」に思える時間が一気に失われた。テレワークは業務効率化や柔軟な働き方を実現した一方で、人と人とが自然につながる機会を大きく減らしたのだ。こうした変化は、大学という学びの場にも色濃く表れているという。

石田 最近の学生はとても堅実で、昔の大学生のように、「ちょっと馬鹿なことをしてみよう」という人は本当に減りました。きちんとしている反面、集団の流れから外れることを強く恐れ、それ自体をリスクだと感じています。コロナ禍以前は、授業が終わっても教室に残って雑談をしたり、食事にそのまま行ったりする学生が少なくありませんでした。でもいまは、授業が終わるとパッと解散してしまう。人と一緒にいる時間そのものが、極端に減っています。

“つながる力”を取り戻す―― 従業員を孤立させない組織に必要なこと

石田光規  Mitsunori ISHIDA

早稲田大学 文学学術院 文化構想学部教授

立教大学社会学部産業関係学科卒業。東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。博士(社会学)。大妻女子大学専任講師・准教授、早稲田大学文化構想学部准教授を経て、2016年より現職。専門はネットワーク論、人間関係論、社会的孤立、地域福祉。『孤立の社会学』(勁草書房)、『「人それぞれ」がさみしい──「やさしく・冷たい」人間関係を考える』(筑摩書房)、『自己決定の落とし穴』(筑摩書房)など著書多数。