「ゆるやかなつながり」を組織はどう設計するか?
では、従業員を孤立させないために、企業は何をすればよいのか? 石田教授は自身の大学ゼミ運営を例に「“強い絆”を無理につくる必要はない」と説く。
石田 大学のゼミというのも居場所のひとつだと思っています。そのため、希望者には卒業後もゼミ関連の情報をメーリングリストでお知らせしていますが、あえてLINEは使っていません。誰が読んだか、誰が反応したかが分かる仕組みだと、それだけでプレッシャーを感じる人がいるからです。メールなら送りっぱなしで済むので、送る側も受け取る側も気が楽です。情報が少ないほうが、かえって関係が長続きすることもあります。
また、年に1度、卒業生向けの集まりを開催しているのですが、「懇親会」ではなく、あえて「授業」という形式を取っています。懇親会だと、「交流しなければならない」と身構えてしまう人もいますが、授業なら、来て座っているだけでもいい。昼間の開催として、当日参加やドタキャンもOKにしています。「行かなきゃいけない」ではなく、「行ってもいい」くらいの温度感のほうが、結果として関係は長続きしやすいのです。人と人との関係を強制的に設計することはできません。誰もが気負わずに参加できる「ゆるやかなつながり」を育てていくことが重要だと思います。
近年、人事領域では「ビロンギング(居場所感)」という言葉が注目されている。しかし、石田教授は「居場所は企業が一方的に与えるものではない」と指摘する。
石田 会社が「ここがあなたの居場所です」と用意しても、本人がそう感じなければ意味がありません。居場所は与えられるものではなく、人との関係のなかで少しずつ育っていくものです。そのためには、自然に会話が生まれる共通体験を積み重ねることが大切です。
例えば、掃除でも研修でも、ちょっとした共同作業でも構いません。同じことを一緒にやることで、自然と会話が生まれます。いきなり「仲良くなりましょう」と働きかけるより、共通の体験を積み重ねるほうが、自然に関係性は深まっていきます。
一方で、テレワークが定着した現在は、「場」のつくり方そのものを見直す必要もあるという。
石田 テレワーク自体が悪いということではありませんが、顔を合わせる機会がまったくなくなると、人間関係は確実に弱くなります。重要なのは、従業員を完全に分断しないことです。出社と在宅とのバランスをどう取っていくか、関係性やチームワークをどう維持していくか、居場所を失わないためにも、それぞれの組織で考えていく必要があると思います。








