富裕層必見!資産防衛&節税術Photo:PIXTA

国税庁が毎年公表する「国税庁レポート」と、元国税「富裕層管理」チームである税理士の目線から、富裕層が知っておくべき最新の国税庁の課税戦略について分析する。連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第36回では、その前・後編の「前編」をお届けする。(税理士・元国税「富裕層管理」チームOB 八幡谷幸治)

「相続税」「法人税」の
追徴税額は右肩上がり

 まずは近年の国税庁の動きから俯瞰しよう。

 国税庁が公表した2021(令和3)年度~23(令和5)年度の直近3カ年度のデータによると、適正な課税を確保するための実地調査や行政指導(接触)の件数、そしてそれらに伴う追徴税額は、コロナ禍の収束による行動制限緩和に伴い、総じて増加ないし高水準で推移している。

 各年度における「所得税」「法人税」「消費税」「相続税」などの主要税目における調査等の実施件数は以下の通りだ。

・2021年度:所得税(3.1万件)、法人税(4.1万件)、消費税(5.7件)、相続税(0.6万件)
・2022年度:所得税(4.6万件)、法人税(6.2万件)、消費税(8.7万件)、相続税(0.8万件)
・2023年度:所得税(4.8万件)、法人税(5.9万件)、消費税(8.4万件)、相続税(0.9万件)

 これらのデータから、22年度に実地調査の件数が大きく回復または増加し、23年度もおおむね高水準を維持していることが分かる。特に「消費税」や「所得税」といった、身近かつ事業者数が多い税目において、重点的なチェック体制が敷かれていることが見て取れる。

 そして調査の結果、申告漏れや不正が発覚し、新たに課税された追徴税額(加算税などを含む)の推移は以下の通りだ。

・2021年度:所得税(804億円)、法人税(1438億円)、消費税(1110億円)、相続税(560億円)
・2022年度:所得税(1015億円)、法人税(1868億円)、消費税(1693億円)、相続税(669億円)
・2023年度:所得税(1066億円)、法人税(2102億円)、消費税(1454億円)、相続税(735億円)

「法人税」における追徴税額は、23年度に2102億円に達しており、大口事業者や複雑な取引を行う企業への厳しい監査が功を奏している。また、「相続税」についても資産家層に対する資産隠し対策が進み、追徴税額は年々、増加傾向だ。

 税務調査については毎年、各税目を合計すると20万件程度が行われており、いつ税務調査の対象となり、実地調査が行われてもおかしくないという意識で備えたい。

 景気の回復とともに企業業績も回復しており、過去赤字だった(繰越欠損があった)会社が、黒字になった途端に税務調査が行われるのは、よくあるパターン。とりわけ売り上げが急拡大しているようなケースでは、事前通知なしでの臨場調査の可能性も高い。定期的に税務調査を受けている企業と比べて備えが緩く(要するにガードが甘い)、厳しい指摘を受けるのも、またよく見かける光景である。

 次ページでは、このような厳格な税務調査を可能にした、最先端の税務調査の手法と、国税庁が狙い撃つ「重点調査」のターゲットを解説しよう。