企業が成長に行き詰まると、新規事業やM&A(企業の合併・買収)に活路を求めがちだ。しかし、それで本当に企業は変われるのだろうか。「診断は正しくても、処方箋を間違える企業が多い」と語るのは、レクサスのグローバルブランド立ち上げを担った後、ヤマハ発動機やヤンマーでブランド改革を率いてきた長屋明浩氏だ。ブランドづくりの核は広告やPRではなく、「自分たちは何者か」を問い続けること──。長屋氏が語る「経営としてのブランディング」の本質を聞いた。(聞き手/音なぎ省一郎、構成/フリーライター 小林直美、撮影/朝倉祐三子)

なぜ、ブランディングでつまずく会社が多いのか
──ブランドを「成長戦略」として捉え直す
ブランディングに悩む会社は、本当に多いですね。今どきの経営者なら誰だってブランドの大切さは分かっています。ブランドが確立されれば、信用され、ファンが増え、価格競争から抜け出せる。だからこそ、会社を成長させようとして真面目に取り組む。なのに、うまくいかない。
よくあるのがこんなパターンです。主力事業の成長に限界が見えてきた。ブランドイメージも古くなっている。このままでは先細りになる──。そう考えて新規事業に乗り出し、M&Aで会社を買う。次第に軸がぼやけ、シナジーが生まれないまま経営資源だけが分散していく。そして気付けば、コングロマリットディスカウントに陥ってしまう。
新しい顧客層を獲得するために、自社の強みを生かして新しい分野に挑戦しようという問題意識も姿勢も正しい。それでも成果が出ないのは、診断ではなく処方箋を間違えているからではないでしょうか。
「それはブランドじゃなくて、事業戦略の失敗では?」と思われるかもしれません。でも、僕に言わせれば、それは違う。どちらも「自社が何者で、これからどう生きていくか」という同じ問いに、違う角度から向き合っているだけです。さっきの例は、事業戦略から見れば「選択と集中」の失敗。ブランドから見れば、自分たちが何者であるかを見失っている状態です。







