面白いのは、見る角度を変えると打ち手が変わることです。事業戦略だけで考えていると、どうしても「どこで、何で勝つか」という発想になる。ところがブランドというレンズを通すと、「自社は何者なのか」「何をやる会社なのか」を内側から問うことになる。そうすると、「市場性は高いが、うちがやることじゃない」と判断がつくようになる。ひとたび判断軸ができれば、事業の選択はもちろん、商品も、広報も、採用も、全てが一つの方向を向き始める。企業全体で「らしさ」を発揮できるのです。

企業がブランドをつくることは、人間が人格を磨くことに近い。例えば、仕事がパッとせず、趣味もなく、鬱々と日々を過ごす人がいたとします。この人が焦って婚活を始めても、うまくいくとは思えません。変えるべきは、まず自分。どんな人間になりたいのかを決め、目標を立て、そこに向かって行動する。すると、仕事も人間関係もいい感じに回りだす。
会社も同じです。ロゴや広告にお金をかける前に、会社そのものの在り方を見つめ直して、組織全体を変革していく。存在意義やビジョンを明確にして、企業価値を高めていく活動。それがブランディングです。
ところが大企業は往々にしてブランディングを、広告や広報といった部分最適の箱に押し込めがちです。これには経営トップの任期の短さにも原因がある。腰を据えてブランドを育てるより「自分の任期中さえうまくいけばいい」というセルフィッシュな考えになりやすい。この問題は深刻です。
僕の体感では、中堅企業やオーナー企業の経営者の方がブランドに懸ける思いは熱い。まず、中堅という「伸び代」のあるポジションだと、自然に「どう成長するか」に目が向きます。また、オーナー企業は、「子や孫の代まで会社を残したい」という長期目線を持ちやすい。両方がそろえば、さらに熱い。







