ブランディングはどのようなアプローチで進めるのか
──プロダクト、コーポレート、PRを同時進行
AKIHIRO NAGAYA1983年に愛知県立芸術大学を卒業後、トヨタ自動車に入社し、グローバルラジュアリーブランド「Lexus」の初代モデルデザイン開発参画に始まり、トヨタの自動車デザインおよびブランド企画に約30年にわたり携わる。続いてヤマハ発動機ではデザイン本部長・執行役員としてグローバルブランド企画とオートバイなどプロダクトのブランディングを統括。 2022年5月、ヤンマーホールディングスに入社し、取締役ブランド部長(CBO: Chief Branding Officer)に就任。25年4月1日付で全額出資子会社であるヤンマーブランドアセットデザインの代表取締役社長に就任し、ブランド・コンテンツ・アセットの創出およびIP活用による価値向上を牽引している。
業界や会社が違っても、悩みや要望はおおむね共通しています。
例えば、どんな企業でも入り口はだいたいプロダクトです。ヤマハ発動機の場合は「バイクのエントリーモデルが売れるようにしたい」が最初の要望でした。上位モデルは調子がいいけど下位モデルが振るわない。商品群全体をブランド化したいと。
さっきも話したように、僕のやり方は、プロダクト、コーポレート、PRを同時並行でやること。中でもプロダクトはユーザーに一番近いタッチポイントですから最重要です。ただし、上のレイヤーにあるコーポレートのブランディング、つまり、企業の長期的な経営基盤のデザインがないと、各領域のプロダクトに横展開できません。
なので、「プロダクトだけでなく、ミッションやビジョンも同時にやりましょう」と最初に提案します。プロダクトだけで成果を出しても1回限りで再現性がないし、僕がいなくなった後に困るのは社内の人たちです。ちゃんと説得すれば、拒否されることはまずありません。
長期の基盤をつくり、プロダクトもこれで良し、となれば、売り方で足りない部分を埋めていく。こうして三つを同時に動かしていきます。
今、経営者はブランドとどう向き合うべきか
──「意味」が企業価値になる時代
今って、「意味の時代」だと思うんです。生きる意味が提供できないと淘汰されてしまう。そんな世界で意味を持つために大事なのは「自分の力で生きる」ことへのこだわりではなく、「生かされている」という視点です。
オリンピックに出るようなトップアスリートを見てください。昔のように勝ち負けにこだわるだけでなく、プレーそのものを楽しんでいるように見えませんか。そして、目の前の相手を打ち負かすより、競技の楽しさを世界に伝えたり、人を元気づけたりするために頑張っている。これぞ「生かされている」ということだし、結果としてこういう人が勝ち続けます。
会社も同じです。「生かされている」という姿勢が見えてくるかどうか。「この会社がなくなったら困るな」と思われているかどうか。つまり、存在意義や意味がある会社にはサステナビリティ(持続可能性)がある。そのように組織をデザインするのがブランディングです。
スポーツもビジネスも、勝ち負けが全てなら1人の勝者と大多数の敗者が生まれて終わりです。でも現実には、負けたチームもゲームを面白くしているし、人を幸せにもしています。勝っても負けても役割や意味はある。
正解がある時代は競合と対立して勝てば良かった。今は社会が厄介な問題だらけなので、相手を打ち負かすより、みんなが役割を果たせる場をつくった方がいい。市場をつくって、「もうかる」をデカくして分け与えればいいんです。するとみんなもうかって幸せになる。つまり、インクルーシブブランディングの先にあるのは世界平和なんですよ(笑)。







