そして、第1等は「深沈厚重(しんちんこうじゅう)」だ。深く考える重厚さを意味する。稲盛はとりわけ、物事を深く考える重厚な性格を重んじた。
そこで稲盛が求めたのが、「常に公平で公正な判断」である。誰もが納得できる形で問題を解決し、人々の「信頼と尊敬」を集める資質を持つ。幌馬車隊という例を使うことで、リーダーに求める公正さが、水の配分や争いの仲裁という仕事の中に置かれている。
稲盛は、公正さを阻むものについても踏み込んでいる。「この公正さを阻害するものは、自分の都合を最初に考える利己心、あるいは私心と呼ばれるものです」。判断を下すとき、まず自分が得をする方を選んでいないか。稲盛の問いは、決める側に向けられている。
部下からの信頼が低い上司の
特徴とは?
この「私心」を、手柄と責任の扱いから考える材料がある。
2025年刊行の学術誌『Journal of Occupational and Organizational Psychology』に掲載されたスザンネ・ブラウンらの研究だ。オランダのさまざまな営利・非営利組織で働くリーダー546人と部下1718人を対象に、上司の自己愛傾向、利己的な行動、部下からの信頼の関係を調べた。
ここでいう自己愛は、自分の価値や優越性を大きく見積もり、周囲からの称賛を求める傾向(誇大型自己愛)のことだ。頭のよさや弁舌とは別の概念である。研究では、リーダーの性格に加え、どんな働き方が評価される職場なのかにも目を向けた。
部下に尋ねた項目には、時間と労力をかけた仕事の手柄を上司が自分のものにしたか、という問いがある。目標を達成できなかったとき、自分にも責任があるのに引き受けなかったかも尋ねている。利己的な行動を、部下が実際に経験した扱いから測っているのだ。
分析では、他人に勝つことを重んじる職場で、上司の自己愛の強さが、利己的な行動を介して部下からの低い信頼と結びついていた。協力や学び合いを重視する風土が弱い職場でも、同様の関係が見られた。
論文の質問項目を読むと、公正さを考えるうえでも示唆的だ。







