当時の僕は、「エバンジェリスト」という、プレゼンやデモをして、人に広げるような仕事をしていた。そういう観点からは最強だったのだろう。

 僕が受かった理由は技術力でも実力でもなんでもなくて、単に相手のニーズに合う能力を、たまたま持っていただけだったのだ。こんなことは、受ける側からはわかりっこない。

 僕は「受けたから」受かったのだ。

 本当に河野さんの言う通りだった。

 毎回このようになるとは限らない。でも、「受けない」と本当はどうなのかはわからない。落ちたとしても、面接官に「落ちた理由」を聞けば次の対策にもなるだろう。

 一番もったいないこと、そして意味のないことは、「受けない」ことだ。

 ドアノックはチャレンジではない。アメリカでの就職に「挑戦」などと言うこともあるが、そんな大層に考える必要はないのだと思う。

「アメリカでエンジニアやってみたいな。やるか」ぐらいの軽い気持ちで十分だ。自分が完璧になるのを待つ前に、まずやってみませんか?

米国の大手テック企業は
本当に「天才」ばかりなのか

 軽い気持ちでドアをノックした僕からすると、その向こうに広がる世界はそれほどすごくはない。

 もちろん、エンジニアとしてすごい人はたくさんいる。でも、そうでもない人もいる。そういう意味で、それほどすごい世界ではない。生まれながらにものすごく賢いとか、想像を超えるようなものすごい努力の結果、この場に到達したという感じの人はいないのだ。

「アメリカで働きたいな。どうしたらいいかな」と軽く考え、焦ることはせずに数年かけて機会をうかがい、待っているうちにチャンスが巡ってきたのでやってきた、という人がほとんどなのだ。

 そしてこれは来てみるとわかることだが、マイクロソフトに限らず、大手のテック企業の大半は、インド人と中国人だ。ネイティブの米国人より彼らが多い。では、インド人や中国人は選りすぐられた天才ばかりかというと、実はそうではない。

 もちろん優秀な人もいるのだが、それ以上に、「近所の誰々さんがアメリカ行ったから俺も行く」くらいのノリでアメリカに来ている。

 それに比べると、日本人はまだ、かなりのものを背負って「チャレンジ」している印象だ。だからこそ日本人はマジでレアキャラ。国としての規模が小さく人口が少ない韓国人よりも間違いなくレアだ。

 もともとあまりアメリカを目指さない国民性なのか、国内でもまだまだ十分仕事があるということなのか、英語が苦手だからなのか、わからない。ただ、英語への苦手意識は中国人も同じであるはず。日本語と中国語は、同じぐらい英語との言語距離が離れている。それでも中国人は、そんなこと気にしていないかのようだ。

 そして、英語が苦手なはずの中国人と、軽いノリで渡米したインド人と、レアキャラの日本人が英語で会話するのだから、その会話レベルはそれほど高くない。少なくとも、ネイティブだらけの空間に放り込まれるよりは、はるかに意思の疎通がしやすい。

 付け加えると、レアキャラである日本人は、この原稿を書いている時点では、永住権(グリーンカード)取得に関しては相当ラッキーな立ち位置にいる。

 たとえばインド人の場合、永住希望者が多すぎて取得まで30年近く待つと言われるが、日本人の場合は希望者が少ないのでたった2年ほど。このチャンスをみすみす逃すのはもったいないのではないか。