Photo by Kuninobu Akutsu
高市政権の発足から1年。長期金利が3%を超えて円安は続き、金融市場の警戒感も強まっている。物価高対策や消費税減税、2040年度までに官民370兆円の成長投資を目指す高市政権の経済政策は、日本経済の再生につながるのか。特集『高市政権1年 サナエノミクスの功罪』の本稿では、政権の経済ブレーンで経済財政諮問会議民間議員を務める第一ライフ資産運用経済研究所の永濱利廣氏と、元日本銀行審議委員でもある野村総合研究所の木内登英氏がサナエノミクスの功罪を徹底討論。対談の前編では、積極財政の評価から消費税減税の財源、金利上昇の背景まで検証・分析してもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
物価高対策には一定の評価も
「市場の信認」欠く高市政権
――高市政権の発足から1年を迎えます。この1年間の経済政策で、評価できる点と改善すべき点は。
木内登英氏 評価できる点の一つは、物価高対策を優先する姿勢です。この数年の急激な物価高は日本経済に大きな影響を及ぼし、所得分配のゆがみを広げています。そのゆがみを縮小し、家計の痛みを和らげる政策は必要だと思います。特に重要なのは、税と社会保障の一体改革です。将来的にその取り組みを拡充する方向性は正しいと考えます。
もう一つ評価できるのは、分配のゆがみを緩和するだけでなく、経済の成長力や潜在力を高めようとする方針を示したことです。ただし、政策の進め方には問題があります。最大の課題は、金融市場の信頼を十分に得られていないことです。
――永濱さんは、この1年間の経済政策をどう評価しますか。
永濱利廣氏 木内さんに同意する点はあります。物価高対策には一定の効果が出ています。消費者物価の上昇率は、東京都区部では補助金で上昇が抑制されていた公共料金の反動などで直近は上昇していますが、対策によってインフレ率を1ポイント程度押し下げているとみています。実質賃金も2026年に入ってプラスで推移しており、そこは評価できます。
一方、その効果を一般の人々が実感しているかといえば、必ずしもそうではありません。ガソリン補助金は価格上昇そのものを抑える仕組みです。電気・ガス料金の負担軽減も、口座から引き落とされる額がいつの間にか少し安くなっているという形です。高校授業料や学校給食の無償化も、恩恵を受ける人が限られます。
それに対して、家計が日々購入する食料品の価格は上がっています。食料品の消費税減税は、これまでの対策で負担軽減を実感しにくかった部分に直接働きかける政策だと考えます。
ただ、木内さんと同様に、市場からの信認には課題があると思います。財政関連の指標をG7(先進7カ国)諸国と比較すると、日本は必ずしも悪くありません。ですが、市場にはなお警戒感が残っています。これをどう払拭するかが今後の課題です。
物価高対策は評価できるが、市場の信認に課題があるという高市政権への見方は両氏に共通していた。それでは市場からの懸念をどう払拭するのか。次ページでは、消費税減税やその財源、積極財政、金利上昇への対応など高市政権の経済政策について議論が続く。







