それに対して、もし彼が向上主義者なら、高い目標を掲げるにしても、それを全てで達成するのは難しいとも考えられるでしょう。やれる限りのことはしつつも、もし失敗したら、それを糧にして次の試験ではさらに良い点数を目指すことができるのです。

 向上主義の彼なら、もし最初のテストでBを取っても、自分自身を嘆いてそこで立ち止まったりせずに、どこが悪かったのかを分析し次に活かそうとします。いや、もっと言えば、Cや落第ではなくてBを取れたことも上出来だったと考えて、自分を鼓舞することもするはずです。

 こうしてみると向上主義は、一回きりではなく、常に長い目で自分を見ることができるということでもあります。目的地ではなくて旅、なのです。地に足の着いた現実的な目標を持つ。完璧でなく向上を期す。失敗を成長へのばねにする。そんな態度です。

 それは自分にもやさしい態度です。向上主義は、健全な不安(破壊的ではなく)や真面目さ、やる気につながっています。結果的に、完璧主義者よりも大きな目標を獲得し、おまけに幸福度も高くなることでしょう。

がむしゃらな努力が
かえって成果を遠ざける

 また、完璧主義には燃え尽きや抑うつが伴いがちですが、向上主義はそれらのマイナス面が出にくいのです(2006年、ストーバーとオットーの研究)。

 向上主義は、人間の努力には限界があることを認めています。どんなに意志の強い人でも、どうしても努力で得られる成果は落ちていくもの。もちろん、賢明に努力するのは必須ですが、それだけでは足りない、努力の仕方が大切だと言っているのです。

 限界を認めて、現実的な努力を重ねることを意識してみることです。

 盲目的に、がむしゃらに努力をしていると、人は何が本当に重要なのかを忘れがちです。生産性も落ち、満足度も下がり、工夫をすることも忘れがちになります。