長い「飢餓期間」で
ノネズミの数を減らす

 ノネズミがタケの種子の捕食者であることがおわかりになったと思います。では、このような状況で、タケが毎年開花するとどうなるか予想してみましょう。ノネズミにとってタケの種子は、安定した食料源となり、ノネズミの個体数は高止まります。そうなれば、タケはせっかく種子を作っても、それをすべてノネズミに食べつくされてしまうでしょう。これでは何のために種子を生産したのかわかりません。

 こうならないようにノネズミの裏をかき、食べられてしまう種子を最少にするようにタケの進化が進みます。その結果が、非常に長い開花周期だと考えられています。

 非常にまれにしか種子を作らず、かつ、作るときには極めて大量の種子を作ればどうなるでしょうか?

『不老長寿の進化学 我々はなぜ「死」を選んだのか』書影『不老長寿の進化学 我々はなぜ「死」を選んだのか』(山田俊弘 ブルーバックス、講談社)

 凶作年が続けば、ノネズミの個体数は低く抑えられるはずです。そんなとき、豊作年が訪れたとします。餌不足のため個体数が低く抑えられているノネズミたちは、大盤振る舞いのご馳走を前にしても、食べつくすなど、到底できません。

 つまり、非常にまれに大量の種子を付けたほうが、毎年決まった量の種子を作るより、捕食者から逃れやすくなるのです。

 もちろん、大盤振る舞いに偶然遭遇したラッキーなノネズミはお腹が満たされ、繁殖をして数を増やすでしょう。しかし、そのときにはもうすでに手遅れです。もう、タケの種子の季節は終わっているのですから。一時的に増えたノネズミも、すぐに餌不足で数が減ります。再び、十分長い飢餓期間を与えれば、ノネズミの数も風前の灯火となります。そんなとき、タケは次の開花を実行するのです。

 以上の考えは、捕食者飽食仮説と呼ばれていて、タケを含めた植物が、長い開花周期を進化させた要因として最も有力視されているものです。