中野友禮
 先週に続き、日本曹達の創業者、中野友禮(1887年2月1日~1965年12月10日)による科学エッセイを再掲しよう。前回記事では、1946年という終戦まもない時期に、中野は二酸化炭素の増加によって地球温暖化が起こることを指摘。特に二酸化炭素は火山の噴火など自然現象によって増えるだけでなく、戦争などで大火災があると大きく増加すると述べていた。その上で「子供のときより暖かくなったような感じの人が多いだろう」とも語っている。

 翌号に掲載されたコラムでは、二酸化炭素の増加というテーマを引き継いで、「炭酸ガス増加原因に最も大きな影響をなすものは海水であって、これが吸収する量は莫大なものである」として、海の持つ可能性に話題を広げている。特に中野が関心を向けているのが、食料問題だ。

 戦後の深刻な食料不足を受けてか、狭い国土でいかに食料を生み出すかについて、陸地を増やしたり効率よく利活用するためのアイデアをあれこれつづっている。そして、ここでも“海の恵み”に着目すべきだということで、陸と海でどちらが生物(食料)が多いかという疑問を提示する。

 中野の科学エッセイは、こうした軽妙な筆致が人気だったようで10年間続く長寿連載となったが、終戦直後の日本が抱える問題意識や世間の様子を知る意味でも、貴重な企画といえる。(敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

植物と動物は
共存共栄で生きている

ダイヤモンド1946年9月1日号1946年9月1日号より

 今日は石炭に水素の加わった「石油」による石油文明時代となっている。世界は石油のにおいに集っている。前大戦では、連合軍は石油の波に乗って勝った。今回の戦争も石油戦であった。ソ連が世界第2の石油国であるにもかかわらず、イランに横目を使っているのはそのためであり、今まさに世界は石油時代であって、人類の文明生活にはなくてはならぬものになっている。

 その石油も40年もたてば地球上に影を没することになる。そうなれば、人類は石炭に水素をくっつけて石油とすることになる。だが、石炭も長くは続かない。